SSS置き場 | ナノ


 和希と音哉と奏斗

 俺と合歓木センパイは相性が悪い。仲がいいとか悪いとかじゃなくて、多分相性が悪い。つーか仲良くしたくない。パート違うから接することもないけどな!

「おはようございます」
「おはよ、犬」
「……」

 仲良くしたくないのはあっちも同じみたいで、表面上は普通の(?)先輩後輩を演じてるけど、裏ではこんなだったりする。
 二人きりの時に呼ぶそのあだ名がマジで気に食わない。俺の苗字の狗井からきてるのは分かってるし、犬好きだけどさ、猫派か犬派か聞かれたら犬派だけどさ、センパイが言うと悪意を感じる。普通に苗字で呼ばれてもそれはそれで気持ち悪いんだけど。

「あ、そういえば、お前に言いたいことがあったんだった」
「……なんですか?」

 センパイとこんな間近で同じ空気吸ってるの嫌だし、さっさと準備室から立ち去ろう。そう思ってる時に限って自分のスティックが見つからないし、呼び止められるっていう最悪の結果になった。朝の占いで最下位だったけど、まさか当たるとは。

「ずっと気になってたんだけど、マーチの表打ちが全体的に遅れてる」

 そっちか。ほっとしたような、そうじゃないような、むしろムカついたような。いや猫柳先輩関連のことかもって思ってたから。

 俺の頭打ちが遅れてるのは猫柳先輩にも言われたから言い返せない。一番簡単そうだったからって理由でバスドラを選んだのは俺だけど(楽譜の白さでそう思っただけで、バスドラが簡単で楽な楽器じゃないのは分かってるよ)、バスドラって低音と同じリズムやってたりするんだよな……。

「あ、和希おはよー。二人が一緒にいるなんて珍しいね。なんの話してたの?」
「あ、猫柳先輩! おはようございます」

 雨でただでさえ重苦しい空気の中に、突如天使が舞い降りた! とか思っちゃうくらいには、一瞬で癒された。……けど、最悪な状況なのは変わらない。合歓木センパイと二人きりは嫌だけど、合歓木センパイと猫柳先輩と俺の三人きりはもっと嫌だ。

「マーチのことで気になることがあったから話してた」
「お、いいねーそういうの。パート関係なしにいろいろ言い合えるのっていいと思う!」
「自分じゃ気付けないことってたくさんあるので、とても参考になりました! ありがとうございます!」
「どういたしまして」

 猫柳先輩の前では笑顔を浮かべて、仲のいい先輩後輩のふりをして、猫柳先輩があっちを向いた瞬間に睨み合って足を踏んづける。……醜い争いなのは知ってる。んで、猫柳先輩がまたこっち向いたらまた笑顔になるやつな。

 俺は合歓木センパイ大っ嫌いだけどさ、猫柳先輩は大好きだから嫌いですなんて言えないし、合歓木センパイも、俺と猫柳先輩は同じパートで仲良くしてるから、俺のことは悪く言えないんだろう。

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