SSS置き場 | ナノ


 奏斗と拓人+α

「いやっほおおおおおおおおお!」

突然聞こえた奏斗の大きな声に、奏斗とは離れた正反対の音楽室の隅の方にいた和希がびくっと体を跳ねさせた。何事かとスタンドを組み立てる手を止めそちらに視線を向ければ、律に抱き着いている奏斗が向こうにいた。その顔は満面の笑みを浮かべていて、とても嬉しそう。

「先輩テンションたっけーなー……」
「無理もないよ。ずっとやりたいって言ってた曲をやることになったんだから」
「ああなるほど……」

和希の他にも状況が分からず突然の奏斗の歓声に困惑している人がおり、同じく頭にクエスチョンマークを浮かべている風の伊吹に説明している理澄の台詞で和希も状況を把握する。と同時にノリノリで踊りながら奏斗がこちらへやってきた。

「ねこやんよかったね」
「うん! 嬉しい! やったぁ!」

今奏斗が口ずさんでいる曲が、奏斗がずっとやりたいやりたいと何度も言っていた曲で、念願かなって今度やることになった曲だ。最近流行っているアニメの曲で、そのアニメを知らなくても曲はどこかで耳にしたことがあるはずだ。耳に残る曲で、曲ももちろん、アニメの中でキャラクターが踊っている振り付けも合わせて小さな子どもから大きな大人まで人気がある。

「文化祭でやるんだよね? 俺お面つけて踊るんだ! 振り付けも全部覚えてるし!」
「……あー猫柳、悪いんだが……」
「はい?」

終始ノリノリの奏斗に、申し訳なさそうに口を挟んだのは千鳥。

「猫柳のほかにも踊りたい、って人はたくさんいるし、その方が盛り上がるとも俺も思ってはいるんだけど……」
「はい」
「人数の関係で、それは難しくて……ましてドラムの上手いお前が抜けるのは痛いから……」
「あ……はい」

本当に申し訳ない、と奏斗に対して頭を下げて千鳥は行ってしまった。

奏斗はそれからしばらく微動だにしなかった。





妖怪のせいなのね

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