SSS置き場 | ナノ


 奏斗と音哉と律と鳴海(大学生)

 四人でアンサンブルをするという高校一年生の時に語り合った夢が叶ったのは、高校を卒業してすぐのことだった。

 奏斗の家にある防音室で、円になって向かい合うように椅子に腰を下ろしている四人が抱えている楽器は、色と形は多少違えどみな同じユーフォニウム。終始笑顔の鳴海の向かい側に座っている音哉はいまいち納得がいっていない表情をしていた。
 ユーフォになったのは、大学生になって律が鳴海にユーフォを教わり始めたからという理由で、とりあえず最初は同じ楽器にしようという話になっていたから、それなら全員ユーフォにしようと提案したのは奏斗。それなら自分はチューバのままでバリチューバアンサンブルでいいじゃんと音哉は最後の最後まで駄々をこねていた。

 鳴海のユーフォは私物で、律のユーフォも鳴海の私物。奏斗と音哉のユーフォは奏斗の親戚から借りた物だ。余談だが、この中で一番ユーフォ歴の長い鳴海のユーフォが一番古い型だったりする。なじんでいるからこれがいいと自分の意思で選んだとはいえ、新しいモデルを羨ましく思う気持ちはある。

「俺4thな」
「……いいけどさぁ」

 先に配られたスコアを見ずに、我先にと音哉はほぼ伴奏の4thの楽譜を抜き取る。五線譜の下のほうに音符が集まっている楽譜が、音哉にとっては安心するのだ。メロディらしき旋律は見当たらないこの楽譜は、四人で合わせるとどう曲にはまるのだろうか。その瞬間がたまらなく気持ちいい。

「僕2ndでいい? まだ上のほうの音コントロールできないから……」
「この中だと2ndが安全牌な感じはするよね」
「んじゃ、俺と奏斗で1stと3rdだな。奏斗はどっちがいい?」
「んー……どっちでもいいけど、どっちかといえば3rdのほうが楽しそうだから3rdかな」
「うわマジだ! 3rdめちゃくちゃ楽しそう……つーかこれ1st軽くしねるな……うわー」
「この中で一番長いのお前なんだから頑張れよ」
「そういやそうだな」

 パートが決まって全員に楽譜が行き渡ったところで、まずはさらっと譜読みをする。中学からユーフォ一筋の鳴海はもちろん、三人もつまづきながらではあるが楽譜を見てすぐに吹けるレベルにはなっていた。

「そんじゃあ一回通しますか!」
「ぐだぐだになったら止めるけど、短い曲だし最後まで通してみようぜ」
「テンポは少し落とすよな。いきなりインテンポはきついぞこれ」
「テンポ落としてくれないと出だし三小節くらいで僕落ちるから……」

 カウントを取るのは、パーカスだからという理由で奏斗になった。吹部ならではの「ワン、ツー、さん、はい」という合図の後、1stの鳴海、3rdの奏斗、4thの音哉、2ndの律と、どんどん音が重なって生まれたハーモニーに、四人の顔が同時に笑顔になった。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -