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 音哉×奏斗

 天気予報で明日は寒いって言ってて、起きたら予想以上に寒くて、今日は外に出ないで家の中でのんびりしようぜ、そう連絡しようかなんて思ってしばらくごろごろしてたけど、久しぶりの休みだし奏斗と出かけるのも久しぶりだったから、頑張って布団から這い出た。寒いのは一瞬で、駅に行って店の中に入るまでの辛抱だ。奏斗と話してれば少しは紛れる。

 家から出ると同時に奏斗もちょうど出てきて、俺を見つけて笑顔になった奏斗につられて俺も顔が緩むのを感じた。

「寒いなー!」
「朝起きて今日はやっぱ家でのんびりしようぜって言おうかって悩んだ」
「あ、俺も俺も。でも、音哉と出かけるの久しぶりだし、お店の中に入っちゃえば寒くないしね」

 まったく同じことを考えてたらしくて嬉しくなる。寒さで顔を真っ赤にして俺を見上げる奏斗はかわいかった。

「つーかお前、そんなのまだしてたのかよ」
「え? そんなのって……ああ、これ?」

 俺が言ったのは奏斗がしてるまぶしい蛍光オレンジの耳あて。去年もこんな寒い日に出かけて、奏斗が帰る時に寒くて帰りたくないってうるさかったから買ってやったやつ。確か二百円くらいだったかな。見た目からして安っぽいし実際安い。

「だってオレンジ好きだし、音哉が買ってくれたやつだし……。ていうか、音哉こそそのマフラーそろそろ新しいのにしなよ……」
「別にいいだろ。まだ使えるんだから」
「でも穴開いてるじゃん。ぼろぼろだしさぁ、俺があげたの使ってくれてるのは嬉しいけど、音哉のイケメン度下がっちゃうから!」
「……意味分かんねーし」

 冬になるとお世話になってるこの紫のチェックの少し派手なマフラーは、中学生の時に奏斗が俺の誕生日にプレゼントにくれたもの。知らないうちにどこかに引っかけたのか小さい穴が開いてたり、毛玉ができてたり、ところどころ糸が飛び出したりしてるけど、奏斗が言うほどまだそれほどぼろくはない(と俺は思ってる)し、寒さはしのげる。何より、奏斗が俺に似合うと思って選んでくれたらしいからな。

「今年……もう去年か。去年の誕生日プレゼントかクリスマスプレゼント、新しいマフラーにすればよかった」
「俺もお前の誕生日にもっといい耳あて買ってやればよかったな」
「そういう問題じゃないんだけど……。まあ音哉がくれるなら嬉しいからいいよ。新しいのもらってもこれもとっておくけどね」
「それ二百円の安物だぞ。見るからに安っぽいじゃん」
「そのマフラーだって値段忘れたけど結構安かったよ」

 問題は値段とかじゃなくて、誰がどういう思いでプレゼントしてくれたか、なんだよな。
 奏斗がくれたから少し派手でも気に入ってるけど、仲良くない奴に同じものをもらってもクローゼットの奥に押し込んでそのうち存在すら忘れてただろうしな。

 穴が開いてても、毛玉ができてても、ところどころ糸が飛び出てても、ぼろいって言われても、俺はこれがいい。

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