SSS置き場 | ナノ


 音哉×奏斗(大学生)

「どしたのー? 音哉ー?」

 机に突っ伏してる音哉の髪をいじりながら聞いてみる。音哉の髪はさらさらしてて触るのめっちゃ気持ちいいから、触れる位置にあるとついつい触っちゃう。こういう時じゃないと触れないからね! 俺がちっちゃ……じゃなくて、音哉がでっかいから!

「……ほんとにどしたの」

 前髪でしばらく遊んでたらようやく起き上がったんだけど、その顔が疲れてるっていうか、げっそりしてるっていうか、目に光がないってこういう状態のことかーなんてのんきに考えてる場合じゃないけど、とにかくものすごい顔しててびっくりした。

「疲れた……」
「お疲れ。そんなに大変だったの? 今日のバイト」
「バイトじゃない……」
「じゃあ何があったっていうんだよ」

 弱々しく呟いて、音哉はまた机に突っ伏す。俺より下にある頭をよしよしって撫でてあげても、その手を掴まれないあたり本当に疲れてるらしい。いつもなら腕を掴まれて、逆だろって言われていつの間にか音哉の腕の中にいて、俺が頭を撫でられてる。
 今は春休み真っ最中で学校も休みだし、練習もなかったはずだから、何かあるとしたらバイトしかないはずなんだけど、バイトじゃないってじゃあなんなんだ。

「バイト終わって帰ろうとしたら急に『デートってどこ行けばいいの?』って聞かれて、なんも思いつかなかったから適当に映画でも見に行けばって答えたら、それじゃつまんねーだろって言われて」
「なんでだよ……映画いいじゃん……デートって感じするじゃん」
「その後お願いだから一緒に考えてくれ、頼むって一時間くらい放してくれなくて……」
「……それは疲れるな。お疲れ」

 どーりで今日は昨日言ってた時間より帰りが遅かったわけだ。帰りに軽く何か食べたり、ついでに買い物したりして少し遅くなるのは俺もあるから別に気にしてなかったけど。少し帰りが遅くなったくらいでまさか浮気? なんて思わないよ。ていうか、なんでそのくらいで疑うのか俺にはよく分かんないね!

「俺楽器屋しか行かねーから別な奴に聞けよ……」
「そういえば俺たちって、二人でどっか行くとしたらほぼ楽器屋だな!? 楽しいからいいけどさ」
「俺も。何も特別なとこ行かなくったって、お互い楽しければどこでもいいじゃん……」
「そうそう。どこに行くかじゃなくて、誰と行くかだよね。俺音哉となら安いファミレスでも全然嬉しいよ」

 俺たちは趣味がお互い楽器だから、楽器屋に何時間もいれる。お互い欲しいものを物色したり、音哉がチューバとかについて話すのを聞いたり、俺が話すのを音哉が聞いてたり、変わった楽器があればそれを触ってみたり、アンサンブルの楽譜をあさってみたり。それは共通の趣味があるからできることだけど、音哉と一緒だから楽しいんだし、つい長居しちゃう。
 安い店でご飯食べるのが嫌っていうのが理解できないのも、自分の楽器を買うために節約してるからか、それとも男だからなのかな。

「で、そいつ結局どうなったの?」
「知らねー。人が頑張って考えてんのにいちいちケチつけやがって、四時から彼女と待ち合わせしてるからって逃げてったから知らねー」
「うわー、そいつめっちゃ殴りたい」
「お前が殴ったら肋骨四本くらい折れるからやめとけ」
「え〜だってぇ〜俺の音哉にひどいことしたから俺許せなくってぇ〜」

 ぶりっこっぽいポーズをしながら言ってみたら音哉が笑ったから、少しは元気出たのかな?

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