▼ 冴苗と美琴
みこは、中身も含めてかわいいと美人の両方を兼ね備えてると思う。それを言うと「さなもかわいいし美人だしかっこいいよ?」って言ってくれるけど、それは嬉しいけど、みことはいろいろ違うよね。
「あ、あのスカートかわいい!」
「あ、ほんとだ! みこに似合いそう」
「そうかな? さなのほうが似合うと思うけど……」
「ないない! あたしに制服以外のスカートは絶対似合わないって!」
もっとみこみたいに誰が見ても女の子! って感じの女の子だったら、あたしもこんなふわふわなスカートを履いてみたかったなぁ。くるって向きを変えたら、ふわって裾が広がるロングスカート。今日みこが履いてる膝丈の花柄のスカートもかわいいけど、みこだから似合ってるんだろうなぁ。
スカートが似合わないって思うのは普段制服以外でスカートを履かないからだよ、って言われて、なるほど、と思ったけど、家じゃどうしても家事をしなきゃいけないから動きやすいジャージかズボンばっかり履いちゃうんだよね。それに、栄一――あ、中学生の弟ね――に笑われるのは分かってるし。せっかく勇気を出して私服でスカートを履いても、そんな反応されたら嫌だよ、あたしは。
「じゃあこれは? さな足長いから絶対似合うよ」
「あ、いいかも。この色いいなー。こういう色持ってないから欲しい」
「いいよね。私も好き」
スカートだけじゃなくて、このスキニーだってみこなら着こなしちゃうんだろうなぁと思うとちょっとずるい。
ロングスカートも、膝丈のスカートも、ミニスカートも、スキニーも、ホットパンツも、キュロットも、スニーカーも、ブーツも、パンプスも、みこはなんでも着こなしちゃうし、センスがいいのもあるんだろうけどどれも似合うからずるいし、うらやましい。
「ねぇみこ、そろそろお昼にしない? あたしお腹空いちゃって」
「そうだね。そういえば私もお腹空いた」
「何食べる?」
「私、かつ丼が食べたいな」
「……かつ丼?」
隣から聞こえてきたその名前に、思わず足を止めた。
部活の関係でみこと一緒に出かけることってあんまりないんだけど、みこと一緒にご飯を食べる時はたいていパスタかドリアとかで、あとファミレスでハンバーグを頼んだこともあったけど、丼とかそんながっつりしたものを食べるイメージがどうしてもなくて、びっくりしちゃって。
「うん。最近すごくお腹空くからがっつり食べたいし、昨日テレビで見たら食べたくなっちゃったんだよね」
「……じゃあ、あたしもがっつりいっちゃおっかな。かつ丼って聞いたらあたしもかつ丼が食べたくなってきちゃった」
「やった。それじゃ、決まりね」
こんな風に素直なところも、みこの魅力のひとつだよね。かつ丼が食べたいなんて、あたしだったら女友達でも言えないと思うもん。