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 (音哉×)奏斗と(鳴海×)律

部活を終えた奏斗と律は、それぞれ音哉と鳴海を待っていた。四人は全員吹奏楽部だが、この時期はアンサンブルコンテストに向けて、チューバの音哉とユーフォニウムの鳴海は金管アンサンブル、パーカッションの奏斗と律は打楽器アンサンブルでそれぞれ出るため、今日のように練習が終わる時間がばらばらな日もある。

「音哉まだかなぁ」
「遅いね」

二人とも好きな人を待つことは苦ではないが、昇降口で待っているために開け放たれた扉から終始冷たい風が入ってきて寒かった。
耳のいい奏斗がかすかに聞こえる足音に反応しては二人で期待するのだが、どれも通り過ぎていったり、先生だったりして何度も落胆していた。

「あ、そうだ。あったかい飲み物でも買っといてやろっと」
「あ、それいいね。僕もそうしよう」

言いながらるんるん廊下を駆けていく奏斗の背中を、律は追いかける。
自動販売機の前で止まり、鞄から財布を取り出して数秒にらめっこした後、えいとカフェラテのボタンを押した。取り出し口に落ちてきた缶の温かさに、奏斗は顔をゆるませる。

次は律の番。コーヒー、カフェラテ、ココア、緑茶、紅茶、コーンポタージュ――一通りあったか〜いと書かれた上の飲み物を眺めた後で、律はふとあることに気付いた。

(そういえば、なるみんが好きなものって知らないな)

鳴海の好きな食べ物はバナナだが、バナナの入っている飲み物はこの自動販売機にはない。鳴海が普段よく飲んでいるものといえば、楽器に悪いからという理由でお茶か水がほとんどだった。無難にあたたかい緑茶にしようか、と思ったが、数時間前、鳴海が部活に行く前に買った飲み物が緑茶だったのを思い出す。

「あれ、これ新しいやつかな」
「お、なんだこれ。見たことないけど、ここの自販機だけなのかな」
「どうなんだろう。三階のにはないよね」

奏斗に悟られるのがなんとなく恥ずかしくて、適当に話を振って時間を稼ぐ。
律がくれるものなら鳴海はなんでも喜ぶだろう。それが鳴海の優しいところだけれど、本当は苦手なものだったら申し訳ない。

「あっ音哉だ! やっと終わったっぽい」

奏斗の大きな声に驚いて、どれにしようかとボタンの上を滑らせていた人差し指に力が入ってそのまま押してしまった。出てきたのはココアで、緑茶じゃなかったことには安心した。

「お疲れ様、なるみん」
「うおおおおおココア!? しかもあったけえ! ありがとうりっちゃん! 大事にする!」
「いや冷めないうちに飲んでよ」
「そ、そうだな。ちょうどココア飲みてーって思ってたからめちゃくちゃ嬉しい!」
「よかった」

ココアを手渡すと案の定鳴海は大喜びで、その言葉に嘘はなく、律の顔に笑みが浮かんだ。

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