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 和希と理澄

文化祭で吹部の男子は強制的に女装させられることになった。曲に合わせてアイドルの衣装を着たらいいんじゃないかっていう提案に、なんで女子は似合わないから嫌だとか言うくせに、男子はノリノリなんだよ。普通逆だろ。誰か却下してくれないか人任せにして黙ってた俺が不満なんて言える立場じゃないけどさ。

「あれ、梓は?」
「梓くんは今日委員会で遅れてくるって」
「本番は? 着るんだろ?」
「クラスが忙しくて時間ないから無理かもって言ってたよ」
「……へー」

梓のクラスが何をやるのか知らないけど、絶対上手いこと利用して逃げただろ。こんなことなら部活を言い訳にクラスのやつエスケープするんじゃなかった。

とりあえず試着してみろってことで、部長から手渡されたのは見るからに安っぽい衣装。……よく見ると男性用って書いてあるんだけど、わざわざ売ってるのかよ。なんのためにだよ。

「早く狗井も着てみなよ」

のろのろと袋を開けてたら、小虎は既に着替えていた。しかもちょっと似合ってるんですけど。スカート押さえて内股になって、ちょっと恥ずかしそうにしてんじゃねえよお前……。パッと見、ほんとにパッと見は女に見えなくもなかった。

「恥ずかしくないのかよお前……」
「そりゃ恥ずかしいよ。でも、こういう機会でもないと着る機会なんてないしね」
「……そりゃあな」

女装癖でもあれば別だけど。もしくは罰ゲームかなんか。そうでもなきゃ、好き好んでこんなの絶対着ない。だから思い出に、って、こんな思い出俺はいらない。思い出というより黒歴史だろ。着るだけなら百歩譲ってまだいいとして、写真撮られたら死ぬ。

「それに、女装って男にしかできないことだから男らしいことだって兎田先輩と猫柳先輩が言ってて、その通りだなって」

……あやうく納得しかけた。そう言われれば確かにそんな気がしなくもないけど。
うさぎ先輩と猫柳先輩は似合うからいいんだよ。先輩たちが女装するとなんかもうほんと女子だし。

「みんなもうほとんど着替え終わってるし、早く着替えたほうがいいよ。猫柳先輩と兎田先輩が待ってるみたいだし」
「え」

小虎に言われておそるおそる振り返れば、既に着替え終わった先輩たちがスマホを構えて俺が着替え終わるのを今か今かと待っていた。やっぱめちゃくちゃ似合ってるし。しかもノリノリだし。笑顔が怖いし。

「和希ー、早く着替えないと、男子高校生の着替え動画流出させちゃうよー? 今日のパンツの柄大丈夫?」
「脅しですか! やめてください!」
「じゃあ早く着替えてこっちおいでよ。パーカスで記念写真撮ろうよ」

……ああ、もう、どうにでもなれ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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