SSS置き場 | ナノ


 鳴海と奏斗と音哉と律

「いいよなーお前らは」

信号が変わるのを待っている間、鳴海がぼやく。

「大好きなふぉにたんなんだし、自分の手で運んだほうがいいじゃん。車の中でがたがたされるより」
「つーか、ユーフォってそんな重くないだろ」
「そうだけどー! 長時間持ってると手ェ痛いんだよな……」

奏斗、音哉、律の三人は両手が空いているのに対して、鳴海の手には楽器ケースが握られていた。中身はもちろん大好きなふぉにたんこと、彼の相棒の銀色のユーフォニウム。しかしMy楽器ではなく学校の備品である。

ティンパニやヴィブラフォンなど大きな打楽器は会場にあるものを借りて、スネアやシンバル、小物などはチューバや弦バスと一緒に先生の車で運ぶため、三人は手ぶらだった。楽器を積んでみて余裕があればユーフォも積んであげるよと言われていたのだが、実際に積んでみるとそんな余裕はなかった。

「代わろうか?」
「いや、いいよ。気持ちだけで充分だよりっちゃん……ありがとう……」
「そう?」

律の優しさが身に染みて、鳴海は大げさに泣き真似をする。奏斗と音哉はというと、信号が青に変わるなりさっさと行ってしまった。

重いと鳴海が言えば律は、大丈夫? 代わりに持ってあげようか? と優しい言葉をかけてくれるのに対し、奏斗と音哉は、ティンパニやチューバと比べたら重くないだろ、大好きなふぉにたんなんだから文句言うなよ、ふぉにたんがかわいそうだろ、などと一切鳴海のことは気にかけてくれない。

「おーい、早くしろよ」
「もう先に行けよ……」

しかし鳴海が遅れれば文句を言いながらも待っていてくれるし、本当にしんどくなったら楽器だって代わりに持ってくれる。

「馬鹿! お前を置いて先に行けるわけないだろ……」
「一緒に行くって、約束しただろ?」
「お前ら……! で、でも、ひとまず俺のことは置いてお前らだけで先に行け! 俺もあとから追いつくから!」
「おう、じゃあ先に行ってるわ」
「なんでそこはのらねーんだよ!」

馬鹿なやりとりをしながら、ひいひい階段を上れば会場が見えてきた。

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