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 熊谷と響介

「お、熊谷に倉鹿野! ちょうどよかった」

熊谷と響介が部活へ向かう途中、顧問の観田先生が前から歩いてくるのが見えた。二人の姿を見つけると手を振って小走りでこちらにやって来た。

「あ、ななちゃん先生こんにちはー。何か用ですか?」
「うん、ちょっと待ってて」

観田七緒先生、生徒の間では通称ななちゃん先生。フレンドリーで部員だけでなく、先生の授業のない生徒からも好かれている。

「これなんだけどさ」
「……なんですか? これ」

すぐに先生は戻ってきた。そして数枚の紙を手渡される。二人で覗き込んでみると、細々とした字で文章が並んでいた。

「文化祭の時のアンケートの結果だよ。嬉しいコメントがいっぱい書いてあったからみんなに見せてあげるといいよ」
「ほんとですか!?」
「うむ。嬉しいね」

思わず響介はその場で小躍りしてしまう。ざっと見ただけでも「よかった」とか「楽しかった」とか、そんなコメントが多々あって嬉しさが隠しきれない。

「ありがとうございます!」
「んじゃーそーいうことでよろしくー」

ひらひらと手を振って去っていく先生の背中に、響介は深々と頭を下げた。その後スキップしだした響介の後を熊谷は追いかける。

「倉鹿野くん、もうすぐ階段だから転ばないようにね」
「分かってるよ。だって嬉しいじゃん、俺たちの演奏を聴いて楽しかったとか思ってもらえてさ。言い出したのは俺じゃないけど、やってよかったなぁって」
「うむ。本当にそうだよね。実にうれしいことだよね。――その前に倉鹿野くん」
「ん? なに? 熊谷――うわあッ!」
「前を向いて歩こうね」

スキップをしながら顔だけ後ろを向いて熊谷と話しながら歩いていたら、目の前に迫った階段に気付かず足を引っかけて盛大に転んだ。そのまましばらく痛みにぷるぷる震える。
少しして復活した響介は、相変わらず笑顔だった。

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