SSS置き場 | ナノ


 連と冴苗と山吹

「なーなーポニテちゃん」
「……先輩が人の名前を覚えられないのは仕方ないですけど、せめて同じパートくらいは覚えてくださいよ」

茅ヶ崎連というこの男は二文字以上の名前を覚えられないらしく、三文字以上の名前の部員は特徴からつけたあだ名で覚えている。ポニテちゃんとは冴苗のことで、いつもポニーテールにしているからそう呼んでいる。そのくらいならともかく、影の薄い副部長や変態ボニストなどと呼ぶくらいだったら名前を覚えたほうが早いのでは、と思わなくもない。ちなみに響介と有牛のことだ。

「いいじゃん。通じるんだし」
「……まあいいや。で、なんですか」
「確かさー、苗字が漢字二文字だったよね?」
「そうですけど」
「んじゃオレと結婚してくれない?」
「……はぁ? なんですか急に」

飲んでいたお茶を盛大に噴き出した山吹に対して、当の本人は至って冷静な反応だった。第三者の山吹はいろいろと突っ込みたいことはあるのだが、むせていてとても言葉を発せる状態ではない。
激しくむせこんでいる山吹を華麗にスルーして、二人は続ける。

「オレの苗字って三文字じゃん? 名前書く時めんどいんだよなー」
「榎並と茅ヶ崎だったら画数どっちも同じくらいじゃ……? 茅ヶ崎のほうが簡単そう」
「榎並も茅ヶ崎もどっちも合計二十二画ですよ」
「そうなの!? さすがだな!」

きっと褒められたのだろうけれど、何がさすがなのだと喜べなくて山吹はさらに顔をしかめる。

「っていうか、ぶっきーが一番楽じゃん! ぶっきー一文字だし! 梓!」
「そうだっけ? じゃそれでいいや。結婚して」
「どこから突っ込んだらいいんですか!?」

何も連は本当に結婚したいと思っているわけはなく、ただ思ったことを口にしただけなのだが、冗談が通じないのが山吹だ。

「結婚したら? 毎日茅ヶ崎先輩のペット間近で聞き放題だよ」
「嫌ですよ! おれそういう趣味ないし! そもそも日本じゃ男同士で結婚できないですから!」
「じゃあ外国行けばいいじゃん」

だからこそ、そこがおもしろくてみんなにいじられるのだということを、山吹はきっと知らない。

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