文武両道、部活動必須の立海大附属中は入学初日から仮入部が始まります。
03.魔王様の絶対王政
「じゃあ今日はこれで解散!」
と言う先生の声とチャイムが鳴るのは同時だった。
早速、柳君に声をかけようと思い、後ろを振り返ると既にいなかった。
(は、早い…)
少しうなだれてたら弦一郎が来た。そういえば、精市と昇降口で待ち合わせしてるんだった。
「名前、早く行くぞ。幸村が待ってるやもしれん」
「うん…」
「どうした?」
「何でもないよ…」
柳君に話しかけようとしたら既にいなくて落ち込んだ、なんて言ったら「たるんどる!」って怒鳴られるに違いない。それは避けたい。
弦一郎の話(説教)は長いのだ。
とりあえず、精市を待たすわけにもいかないので教室の扉へ向かう。
「遅いっ」
「へ…」
「…幸村、待ち合わせは昇降口ではなかったか?」
教室から出た瞬間、目の前には精市がいた。
てか、遅いも何もみんな教室や廊下にいるではないか。大体、弦一郎の言うとおり待ち合わせは昇降口だったはず…
「だって俺が教室出たら二人のクラスがちょうど終わるとこだったんだもん。それに終わったのに、すぐ出てこないから…」
「謝るから、お願いだから入学初日から心読まないで…」
精市の読心は今日も容赦ない。
再びうなだれる私の肩を弦一郎が、ぽん、と叩く。うん、弦一郎の慰めはいらないかな…
「どうでも良いけど早く行くよ」
「ああ…」
「うん…って、私は行くとこ違うから今日は此処で…」
「何言ってんの?」
「…え?」
精市が私達にお構いなしに仮入部に行くのを促してきたから、私は別れを告げようとしたのだが、中断させられた。
その台詞をそのまま返したい。
「名前も一緒に行くんだよ」
「だって、二人はテニス部に行くんでしょ?」
「そうだよ、当たり前じゃないか」
「私、茶道か料理にするつもりなんだけど…」
そう告げると「は?」って顔をし、もう一度「何言ってんの?」と言って、とんでもないことを口にした。
「名前はテニス部のマネージャーだろ」
(なんで?!)
(俺が決めた)
(マネージャーなんて無理だよ!)
(いいから行くよ)
(やだやだ離してー!)
(うるさい、その口縫いつけるよ?)
(……!!)
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