あれから私は幼馴染みと合流でき、入学式も無事に終わった。

今は自分のクラスに向かっているところです。



02.初めての気持ち



「…にしても、俺だけ仲間外れ?」

「仕方なかろう、先生方が決めたものだからな」

「何だよ真田のくせに」

「ぬ…?!」


この二人は私の幼馴染みである。

口を少し尖らせながら話しているのが幸村精市。
何だかお堅そうな口調の「真田」と呼ばれたのが真田弦一郎。

因みに私と精市は幼稚園からの付き合いで、弦一郎とは精市のテニスクラブで出会ったのだ。


私と弦一郎は同じクラスなのに自分だけ違う、と拗ねる精市を二人で宥めてたら、精市のクラスの前まで来た。精市がかなり不服そうな顔をしている。

なんだこの拗ねっぷりは。
最早ただの駄々っ子である。

そんな精市に苦笑しつつ別れを告げる。


「じゃあ、また後でね」

「待ち合わせは昇降口でいいな?」

「…ああ」


未だ不満げな精市に手を振り、私と弦一郎は私達のクラスへ向かう。


「あ、此処だね」

「うむ」

「クラス、馴染めると良いなぁ」

「お前なら大丈夫だろう」

「ふふ、ありがとう」

「では後でな」


座席表で確認して自分の席につく。

私は真ん中より、やや後ろの席だ。
うん、悪くない。
弦一郎なんか教卓の目の前だ。
普通なら嫌がるところだけど、弦一郎だ。今も席について「たまらん席だ!」なんて言って、みんな引いてる。

……学校内で、あまり話さない方が良いかも。私の沽券に関わる。


弦一郎がこの空気に気付いて振り向いてきた。…視線があった。
私は後ろを見る振りをして目を逸らす。


(あれ…)


ロッカーまで逸らした視界の端に見覚えのあるものが目に映った。

一人黙々と本を読む。少女と見紛うさらさらのおかっぱ。


(さっきの子だ)


そうか、同じクラスなのか。
話しかけてみようか。いや、彼は今読書中だ。邪魔しちゃ悪い。
後にしよう。



それからHRで自己紹介とかやって、今日は終わった。

彼は『柳蓮二』と言うらしい。


(やなぎれんじ…)


何だか、その名前の響きが宝物のように思えた。



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