部屋の中に、窓を叩く雨音が静かに響く。
ぽつぽつぽつと音を立てる、大雨というほどの勢いではないが、小雨よりは粒が大きい雨を、エアリスはふと眺めた。
雨。
前の世界では空を見る事すら怖かった時があったのに、今ではもう普通に見上げる事もできて、そこから降る雨を見ても、ああ雨なんだな、と、どこか暢気に思うくらいだ。
……もっとも今は、情事の後の眠りから覚めたばかりなので、頭が上手く働いていないという事もある。
「何を見てんだ?」
後ろから耳をぺろりと舐め上げられる。
ひっ、と思わず上ずった声を上げると、耳元で低い笑い声が響いた。
「かーわいい、な……俺のエアリス」
飴でもしゃぶるように舌で耳をなぶられ、軽く立てられた歯で耳たぶを食まれる。
後ろから腰に腕を伸ばされ、抱き寄せられた。
「んぅっ……やめてよ、ザックス……」
くすぐったいよと笑うと、今度は首筋にキスを落とされた。
「やめてやらない」
何も身に着けていないエアリスの身体に、ザックスはいやらしさと愛おしさを込めて掌と唇を這わせていく。
白く、肌理が細かく、交際する半年前までは清らかで、そして今では快楽と愛を知ってザックスだけに全てを許している、愛おしい身に、支配の印を付けていく。
「んっ」
片手で腹部を優しく撫でながら、首筋に、肩に、背中に、吸い付いていく。
エアリスは肩口にザックスの硬い髪質を感じた。
その髪が汗で湿っている事に気づき、エアリスは小さく嬌声を上げながら尋ねる。
「ねえ、……ん、ゃっ、私、寝ちゃったけど、どれくらい経ったの……?」
「ん? いや、そんなに経ってねえぜ? ヤって、エアリスが気絶して寝ちまって、先にシャワー浴びようかなって思ったらエアリスが起きているのに気づいて今この状態」
「やっ」
足の間に指を潜り込まされる。くちゅ、という水音が微かに響いた。
ザックスが強引に掌を入れる。
背を向けて横たわっていたエアリスの身を仰向けにさせ、右手の掌全体で秘所を撫で、左手でエアリスの髪を優しく梳く。
顔を覗き込むと、エアリスの頬がほんのりと赤くなった。
「……えっち。絶倫。もう今日だけで四回目だよ?」
「まだ足りねえんだ。もっとエアリスに俺を刻み付けたい。エアリスは俺の恋人で、俺だけの存在なんだと、……俺自身が、もっと知りたい」
ズイと顔を近づけ真顔で言うと、エアリスの顔が綻び、花のような笑顔が浮かんだ。
両腕をそっと持ち上げ、ザックスの肩から首へ、後頭部に回し、
「じゃあ、……いっぱい、刻み付けてくれる?」
「勿論」
唇に強めのキスを落として、ザックスはエアリスの横に置いていた身を持ち上げ、彼女の上に覆い被さった。