一日を繰り返していって毎日と言う。
長く思えて実は短い一瞬の連続。
朝には起きて、教室に行って授業を受け、訓練を行い、出動命令が出たら武器を持って皆と向かい、敵を倒して殺して血を浴びて、帰ったらシャワーを浴びて報告書を書いてクラサメに提出する。
その次の日も似たような事の連続。
起きて顔を洗って服を着替えて朝食を食べて教室に行って授業を受けて訓練を受けて出動し、敵が来たら殺してこっちからも距離を詰めて殺して逃げられたら追って殺して命乞いされても殺して、殺して殺して殺して殺して――――。
多少の差異こそあるものの、ほとんど似た日々の繰り返し。
背景は、どこかの大きな建物や、教室に、砂埃の舞う戦場、下水道など、様々だ。
しかし、背景は違っていても、赤い制服を着ている同年代くらいの学生が傍にいる事と、絶えず血が飛んでいるという共通点がある。
ここはどこだろう、と考えると、ふと景色が変わった。
真っ白な空間。
上を見上げても天井が無い。
横を見てみても壁らしき物が見えない。
更にはあの奇妙な鎖も姿を消していた。
あれー? と首を傾げていると、見慣れた人影を見つけた。
「あ。エイト!」
何故か先程には気づけなかった、すぐ近くにいる彼の肩をポンと叩く。
どこかあらぬ方向を眺めていた彼は振り向くと、淡く微笑んだ。
「ねえエイト、ここどこなのか分かる? 何か真っ白で意味が分からないんだけど。鎖みたいなの知ってる? 何かさ、ここじゃないどこかにいて、もっと大勢といたような気がするんだけど」
でさ、と、少し声が硬くなったのを自覚しながら、
「そこであたしら、人を殺してたんだ。一杯。十とか、そういう単位じゃ数え切れないくらい。エイトは何か分かる?」
「……いや」
「そっか。誰かここに来てくれるかな、何か知ってるかな……」
「ケイト」
「ん? 何?」
エイトは不思議な笑みを浮かべていた。
「夢だよ。あれ。全部」
「――夢……?」
「そう。ただの夢だ。だから気に病む事は無い。他の連中ももうすぐ来るだろう。……指揮隊長もな。だから、それまでに整頓くらいはしておかないとな」
言って、エイトが振り向き、歩いていく。
ケイトがその先を目線で辿ると、数メートル先に、まるで出来損ないの積木のように積み上がった机や椅子があった。
あの鎖で見たのとは違う物だ。数人ずつが腰掛ける物ではなく、一人ずつが使うタイプの物である。
今でこそ瓦礫のように積み重なってはいるが、良く見てみると作りはしっかりしていて、目立つ傷も見られない。
積木の山から下ろせばすぐに使えそうな状態だ。
「あたしも手伝うよ」
いつの間にか鎖の中でのあの日常はすっかり忘れて、ケイトはエイトの背中を追った。