コスモス陣営に新たなメンバーがやってきた。
ジャケットを羽織り、ペンダントを提げ、ベルトを幾重にも巻き、身体のラインがくっきりと分かるシャツとジーパン――という、ちょっとゴツいけどシンプルな服装が良く似合う、外見年齢は二十代中頃のお兄さん。
スタイルの肉付きやプロポーションはモデルのように整っており、顔は鋭く引き締まっていて凛々しく、雰囲気は落ち着いていて成熟した大人の余裕を伺わせる。
戦闘能力は高く、集団戦も個人戦も難なくこなし、前衛に出て武器を振るう事もあれば、戦況を即座に読んで後衛に下がる器用さも持ち合わせている。
容姿、スタイル、戦闘能力、雰囲気と全ての項目が高い基準を満たしており、更に魅力的なのは表情だ。
「ティファ、今日の夕食の材料を持ってきた」
「あ、有り難う。重い物ばっかり調達してきてくれて……本当に助かったわ」
「いや、これくらい何ともないさ」
唇の端をわずかに上げて浮かぶ、淡くささやかな笑み。
「ティナ、髪に埃が」
「あ……有り難う……えっと……あのね、レオン」
「……ああ、構わないぞ。そこに座って。今、結び直してやろう」
「有り難う、本当に」
「俺で良ければ、またいつでも頼んでくれればいい」
擦れてはいないのに、明らかに女性との対応に慣れた優しい笑み。
「バッツ、口元にパン屑が付いているぞ」
「ん? おっ、悪いな。サンキュー」
「全く、何だか子供みたいだな」
ポンポンと頭を撫でながら浮かぶ笑みは、年下の弟を見守るように優しく。
「レオンさん!」
「オニオンナイト。……ああ、もうこんな時間か」
「手合わせ宜しく!」
「――加減はしないぞ」
年下の仲間達との手合わせや鍛錬を終えた後、タオルや飲み物を渡し、技の出来栄えなどを褒める笑みは慈愛に溢れている。
感情の起伏は決して大きくないが、どれもこれも一級品の笑顔だ。
「いやあ、何かスゲェいい男が来たな」
ジタンが女性を口説こうにも、レオンが夕食の準備に仕込みなどあれやこれやと手伝いをしているため、その間に入るのは邪魔するようでどうも気が引けてしまう。
が、その隣でバッツは小首を傾げていた。
「どうしたバッツ?」
ジタンが見上げ小首を傾けると、バッツは首を捻りながらも台所で調理をしていくレオンを見据えながら、
「……なんっでだろーな……」
レオンの額に刻まれた傷、黒い髪、滑らかな肌、鋭く整った顔立ち――レオンはいわゆる美形の類なので、どこもかしこも目が惹かれる――を順繰りに見つめながら、呟く。
「何か、誰かが重なるんだよ」
額の傷。黒髪。鋭い目つき。
声。
「バッツ」
レオンに誰かが重なる。レオンより幼いが、レオンと良く似た、男というより少年と言うべき仲間。
――誰だったっけな、レオンより口数が少なくて……。
「バッツ。……どうした? ボーっとして」
いつの間にか目の前にレオンがいた。
頭にポンと、やや硬い温もりが載せられる。それはレオンの掌で、わしゃわしゃと髪を掻き混ぜられ、
「バッツ」
甘い眼差しで見つめられた。何か言いたげに、しかし彼は何も言ってこない。
彼はスコールであってスコールじゃないのだ。
これまでの幾度かの世界で距離を縮めつつあった仲間の事を思いつつ、バッツはその事を悟った。