中空から容赦なく魔力の珠が連なり降り注ぐ。
地上を走ってそれらを回避しながらフリオニールは素早く弓を構え、つがえた矢を放った。
大気を切り裂きながら矢が素早く走る。
追尾機能もあり、直撃すれば体力を削る事のできる大振りの攻撃は、しかしいとも容易くかわされてしまった。
まるで踊るような優雅な舞いでフリオニールの攻撃をさらりと回避した相手、クジャはほんの少しだけ高度を下げると、軽く言い捨てるように嘲笑った。
「そんなちゃちな弓矢、僕には届かないよ」
くっ、とフリオニールは呻いた。
相手は空中戦が得意で、しかも魔法を使う。対して自分は地上戦の方が得意で、どちらかというと空中戦は苦手だ。
しかしここは戦場。苦手だの何だの言っている場合は無い。言ってもどうにもならないからどうにかするだけだ。
フリオニールは弓矢を構えた。
「まだ来る気かい?」
独特の優美な声で冷淡に見下したクジャは、しかしフリオニールの眼差しを直視した途端に息を呑んだ。
強く光る瞳。
熱さえ孕んだ眼差し。
どんな宝石にも劣らない、至上の生命の輝きだ。
その瞳に射抜かれて、動けない。
魅入っている内に、気づくと、フリオニールの腕から矢が放たれていた。
「くっ……!」
すんでの所で回避する。
矢が掠り、髪の一房を、頬の一滴の血を奪って行った。
しかし外せぬ視界の中には、弓を構えたまま、駆け出して距離を詰めようとする義士の姿があった。
「来る気かい!?」
自分でもテンションが上がっていると自覚しながら、クジャは自分の心を貫いた矢を引き抜くべく、イミテーションではない、情熱を持つ本物の義士を殺しにかかった。