「ティファ。あーん」
「? うん、あーん……」
クラウドの声に半ば条件反射のようにティファが唇を薄く開けると、そこに水滴の付いた瑞々しく丸い何かが押し付けられた。
クラウドの指がティファの口の中へ優しく押し込む。ティファは素直にそれを口の中に含んだ。
甘い香りが口の中に一杯に広がる。
砂糖のような人工的な甘さではなく、ほんの少し酸っぱさを含んだ瑞々しい甘さだ。
奥歯で噛んで味を確かめる。やや強めの弾力と、久し振りに感じる果物の味を感じた。
「これ、葡萄?」
ティファの問いに、クラウドは優しい笑みで頷いた。
「さっき哨戒の途中でモーグリが声をかけてきてな。珍しい食材を一括で仕入れたから見てこいって。安く買えたよ」
「果物なんて久し振り……」
ころころと舌の上で良く味わい、良く噛んでからティファは飲み込んだ。
喉に爽やかな後味の甘さが残る。
「有り難う、クラウド」
ティファが微笑むと、クラウドも優しい笑みを返し――ティファを抱き締めた。
身体の前面にクラウドの温もりを、背中に回される腕を感じながら、ん、とティファが息を詰めると、クラウドと目線が重なった。
瞳が熱っぽく潤んでいて、見つめていると吸い込まれそうになる。
「ティファ」
零れる声は、ここにコスモス陣営の他の仲間がいれば驚いただろう、甘えを最大限に出しているためにいつものクールさは薄れている。
それを嬉しく思いながら、ティファは頷いた。
「いいよ」
許可を受けて、おもむろにクラウドはティファの胸の上部に顔を載せた。
シンプルなシャツとその下の肌着だけで覆われた、ふわふわぽよよんの夢の塊に顔を押し付け、更には手を這わせて下から鷲掴みにしてふかふかもきゅもきゅの感触を心ゆくまで味わう。
「んー……」
夢と浪漫の感触を堪能するクラウドの唇から気の緩んだ声が上がる。
ティファは彼の背中に腕を回して抱き締め、淡く引き寄せながら、片手で彼の頭を優しく撫でた。
「よしよし」
仕草だけなら、子供を宥める母親にも見える――が、ティファの目には熱を帯びた恋情と、彼を甘やかしてやれる今への喜びで満ちていた。
「葡萄、有り難うね」
「ん」
クラウドはぽわぽわふにふにの感触を顔面で味わった。
どんな枕よりも優しくて温かい、そしてマシュマロより柔らかくて、きっととても甘い、大好きな恋人の胸を堪能する。
否、別に胸が好きなのではない。愛する恋人がたまたま巨乳だっただけだ。
しかも最初に冗談半分でやってみたら意外にもティファの方が嬉しそうに甘やかしてくれるので、何やかんやで三日に一度くらいのペースでねだるようになっていた。
「ふわふわー……」
「はいはい」
何だかモーグリをふかふかしている時のティナみたいね、とティファは淡く苦笑を漏らした。
ちなみにこの数分後、一粒だけもぎ取った葡萄をクラウドから預かって水洗いを済ませ、呼びに来たフリオニールが二人を見て真っ赤な顔で絶叫するのだが、数分後なので今の二人には知るよしもないし関係も無いのであった。