「ユウナ」
「……ティーダ」
この世界で会えて、そして、この夜の泉では二人きり。
コスモス陣営のベースの近辺には三つの泉があるが、仲間達は二人が毎晩に訪れるこの泉とは別のを使っている。
そちらの方が距離は近いから、今のところ、この泉を二人で独占しても特段の問題は出ていない。
だから、毎晩、ここは二人だけの場所になる。
「こっち、おいで」
ティーダが衣服を全て脱いで泉の中に入り、振り向いて両腕を広げると、同じように一糸纏わず肌を晒したユウナがその中に飛び込む。
二人が抱き締め合った瞬間、ぱしゃぱしゃと少しはしゃいだように水音が揺れ動き、水面に映る月が揺らぐ。
月も星空も、水面に映るそれらも際立って美しい。
だが、二人はそれらには全く目もくれない。
水に濡れて月の色に光るユウナの裸体に、ティーダはぽうっと見とれた。
「綺麗っス……」
うっとりと見つめてくるティーダの視線に、ユウナの頬が赤くなった。
ティーダが手を伸ばしてユウナの肩に触れる。
水に濡れたティーダの手は少し冷たいが、芯にじんわりとした彼自身の掌の体温を感じた。
熱い。
まるで熱に浮かされているように、ティーダの眼差しも熱っぽく潤んでいる。
肩に置かれた掌がユウナの肌を撫で、鎖骨を撫でる。そこから首筋、顎へと指先を這わせ、掌全体でユウナの頬を包んだ。
その手の上からユウナは自分の手を重ねた。
熱い。
冷水ではないけれど、夜風に晒されて決して温くはない水に浸かっているはずなのに、どうしてこんなにも。
「ユウナ……好き……」
「私も……」
ただただ互いを見つめ合い、やがてどちらからともなく唇を重ねた。
ティーダのやや厚めの唇がユウナの華奢な唇を淡く吸い、送られてきた呼吸をも飲んで代わりに舌を差し出す。
ティーダの背中に腕を回して身を引き寄せるユウナも絡みついてくる彼の舌と唾液を受け止め、その感触と音に陶酔する。
ここにいる。
ティーダも、自分も。
ここにいて、共に在る。
それだけの事なのに、頭の中がくらくらするくらいに嬉しくてたまらない。
「ん……」
やがてティーダが唇を離した。垂れ下がる唾液の糸を舌で掬い取り、最後にちゅっと音を立てて淡く重ねる。
ユウナは、自身に回されるティーダの腕に力が籠もった事に気づいた。
ぎゅうっと。求められているように。
「ティーダ……」
息苦しささえ愛おしくて、肌の表面の水が少し疎ましく感じてしまう。
つるり、さらりと、いつもは心地良く感じる水なのに。
こうして泉で戯れていれば、それを感じているのは紛れも無く自分であり、それ故に水に濡れるのは至極当然の事なのに。
今は彼との距離を隔てさせているようで、少し悔しい。
「もっと……ぎゅっ、て、して」
ユウナが水に吸い込まれそうなほどの小さな声で囁くと、それを一つ残らず聞き漏らさなかったティーダが更に強い力で抱き締めた。
壊れるくらいに。
いや。
「こわ、して」
密着し合ったまま見上げて言うと、ティーダは頷き、両手でユウナの肢体に優しく指を這わせ始めた。
先程までの、優しさだけでなく、肉欲を含めた手つきにユウナは身を震わせながら、身体と心を満たしていく充足感に目を閉じた。