少し前、ジャックの誕生日にパスケースを渡した。

 プレゼントにパスケースを選んだのは、ほんの気紛れのようなものだ。

 最初はワックスなりタオルなり実用的な物を渡そうと考えていたが、任務でとある町に訪れた際、ショーウィンドウに飾られたパスケースを見てふと立ち止まったのだ。

 一年に一度の誕生日に消耗品を渡すのも芸が無い。何か残る物を渡してもいいのではないか。

 そう思い、半ば衝動的に買ったのだ。

「誕生日おめでとう、エイト。これ、プレゼント」

 そして、八月三十日。エイトの誕生日。

 ジャックから渡されたのは、銀色のチョーカーだった。

 包装も何も無く、いきなりポンと渡されたそれに、エイトは困惑する。

「俺はアクセサリーは着けないぞ」

「うん、分かってる。それは僕のただの自己満足」

「……まさか」

「本当は首輪を贈りたかったけど代わりにチョーカーにしたとか、そんな事ないよ?」

「……」

「――あ。……で、でも僕ちゃんと諦めたじゃん! 代わりにこのチョーカー『JACK to EIGHT』って掘ってもらったけど!」

 ほらここに! とジャックが掲げたチョーカーをエイトは摘み上げ、自らの首に填めた。

 喉元が苦しくない程度にベルトを調節し、

「これでいいか?」 

「……エイトぉぉぉぉー!!」

 ジャックが長身をぶつけるようにしてハグをしてくる。

 タックルにも等しい衝撃をエイトは苦笑気味に受け止め、彼の背中に手を回した。

 彼の肩口に顔を埋めながら、ひそりと囁く。会話の流れで先程は言えなかった一言を。

「……有り難う」




 

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