「誕生日おめでとう、ジャック」

「有り難う、エイト」

 君に言われると格別に嬉しい。

 僕がこの世界に産まれた事。

 僕がこの世界に生きている事。

 凄く嬉しい。

「これ」

「わ、プレゼント? 有り難う」

 ねえ。

 エイトはこの世界で生きていて幸せ?

 いつまで経っても戦争が終わらなくて、僕達は0組っていう狭い箱の中にいて、だけど世界から逃げる事なんてできなくて。

 終わらない日常。

 誰かを殺して生き続ける日。

「あ、これ……パスケース? 凄い格好良い。この時代に、高かったんじゃないの?」

「安売りしていた」

「そっかぁ。有り難うね、エイト」

 窒息しそうな日常。

 ほんのちょっぴり見えている未来。

 ずっとずっと戦わなきゃいけない重圧感。

 でもね?

 君がいるなら、この世界に産まれて良かったって、心からそう思えるんだ。

 エイトは?

「――エイトは、僕が産まれた事、祝福してくれる?」

「馬鹿。当たり前だろ」

 エイトが僕の肩に手を置いて、ちょっと背伸びをする。

 目を閉じると、唇に柔らかい感触が来た。

「エイトからキスしてくれるなんてすっごいレア」

「今日だけだからな」

 顔を真っ赤にしてぷいってそっぽを向く。

 可愛い。

「せっかくの誕生日なんだから、今日は僕に付き合ってね」

「……言われなくても」

「有り難う。嬉しい」

 今日一日は君を独り占め。

 君とずっと一緒にいて、エネルギーを補給しよう。

 また明日からも果てしなく続く戦いに、立ち向かうために。
 



 

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