マシュマロとチョコレート、どっちが好き?
僕はね、どっちも好き!
マシュマロはほわほわふわふわのぷにぷにでおいしいでしょ?
チョコレートはほんのり甘くてもしっとりビターでもグッド!
つまりね、どっちかを選ぼうなんてむしろナンセンスじゃない!?
「なわけないだろ」
「納得できるか馬鹿」
頭にチョップを、鳩尾に肘を食らって僕は撃沈した。
いくら僕が0組でも痛いものは痛い。特に鳩尾が痛かった。
鳩尾を手で押さえながら起き上がると、エイトのアーモンド型に近いくりくりの可愛い眼と、ナギのちょっと切れ長で綺麗な目が僕を見下ろしていた。
うわお眼福。てかそんな見下ろさないで。興奮するよ僕!? いやMじゃないけど!
「それで? わざわざ裏庭に呼びつけておいて『僕、二人と付き合いたいんだけど!』って言った二股希望のジャック君?」
エイトのすらりとした腕に胸元を掴まれ、膝が立つまで高々と持ち上げられ、
「今の発言の真意は何なのか、ちゃんと答えてもらおうか」
ナギのナイフがすっと首筋に添えられた。
二人から、まっすぐで、かつ冷たい目線を注がれる。
ああヤバい興奮する。
「そんな事を言われてもさ、ほんとに二人とも大好きなんだよ。ドキドキしてムラムラするの」
何故か二人から蔑んだ目をされた。本当の事を言っただけなのに何でだろ。ついでにトキメくのは何でだろ?
「僕、二人とお付き合いしたいの」
真面目な顔で言うと、エイトとナギが顔を見合わせた。
やがて二人が溜息をついた。
ナギがナイフを僕の首筋から離した。
「しょうがねえな」
「全く……」
エイトが深々と溜息をつく。
と、不意に、さっきより更に強い力でグイッとエイトに胸倉を掴み上げられた。
ナギが僕の片腕を引っ張って僕の足を立たせてくれる。
「っと、ありがと――」
言おうとしたら、両脇にぎゅっという温もりを感じた。
ナギが僕の右腕に両腕を絡め、エイトが僕の左腕に手を添えて、身を寄せている。
――抱き着かれている!
「え、な、なななななな」
うあああああ何この両手に花状態!
僕が狼狽えていると、ナギが悪戯っぽい目で僕を見据え、エイトが涙の薄く張った目で僕の事を見上げてきた。
「しょうがねえな。三人で付き合ってやるよ。――な、エイト?」
「……ん……」
エイトがこっくりと頷く。赤く染まった頬が可愛い。ぺろりと頂いちゃいたくなるくらいに。
思わず魅入ってしまうと、右腕の温もりが更に密着してきた。しっとりとした、でも弾力のある温もりが制服越しに染みてくる。
「エイトにばっか見とれんなよ。俺の彼氏でもあるんだろ」
言いながら、ナギが僕の頬に唇を押し当ててきた。
ナギからのキス!
僕の意識がふわーっと天にも昇りそうなくらいに急上昇する!
「あああああ、二人とも大好き!」
湧き上がった衝動のままに叫ぶと、
「こ、こんな所で叫ぶなっ」
鳩尾にエイトのパンチを食らった。
ここ裏庭だから大丈夫だと思うんだけどなあ、もう、エイトったら。
ナギも小さく笑っている。
エイトもナギも可愛い。好きだ。愛してる。
エイトとナギが僕の恋人で、二人の恋人が僕。
もう素晴らしい!
これから僕のウハウハウキウラブコメキライクが始まるんだ!