十年前の真相を聞かされた時、ああそうなんだ、と、そう思った。

 私の中に封印されたから、なんだ。

 私がここに来たから、なんだ。

 私のせい、なんだ。

 でも、じゃあ、謝ればいいのかな?

 巻き込まれただけなのに、償わなきゃいけないの?

 そんな風に思った。





 自分なりに考えて答えを出した。

 綾時は殺さない。

 約束の時まで踏ん張る。

 そう誓った。





 タルタロスを駆け上がる日々。

 仲間と自分の疲労状態を考えながら、確実に力が付けられるようにと考えながら、ひたすらシャドウを倒す日々。

 シャドウを倒す事自体は殺伐としているけれど、思えばこの町に来てからの日々はとても楽しかった。

 異性の親友ができた。

 同性の親友ができた。

 物凄い美人で先輩の生徒会長。

 本当はちょっと天然な無敗のボクシング部部長。

 その部長さんと兄弟のペルソナを持っていた先輩。

 自分達よりずっと年下なのに頑張っていた後輩。

 言葉は通じなくても大切に思ってくれていた仲間。

 腹を割って話してくれた委員会の友達。

 風花と頑張った料理部。

 べべと喋りながら繕ったり編んだりした同好会。

 理緒と一緒に汗を流した運動部。

 色々とあったけど一緒に仕事を頑張った生徒会。

 笑顔を見せてくれた舞子。

 自分が作った話を渡して去って行った神木さん。

 夜のクラブで話した無達さん。

 原石って言ってくれた田中社長。

 本当の孫のように可愛がってくれた文吉おじいさんと光子おばあちゃん。

 命と終わりについて、考えていたアイギス。

 満月に近い夜に出会えた友達、ファルロス。

 甘い言葉で口説く癖に、結末を残していった望月綾時。

 いろんな思い出ができた。





 そう。

 ああ、この町で果てるのなら悪くないかもな、って、そう思ってしまうくらいに。

「……間もなく最上階です……」

 テオドアが呟く。

 イゴールという老人の前に、一枚のカードが浮かんでいる。

 宇宙。ユニバース。

 私が繋いできた全ての絆。

「ねえ」

 二人にも、言っておきたかった。

「イゴールさん。テオドア」

 力を貸してくれて、有り難う。それから。

「さようなら」





 対峙したニュクス・アバターからは、甘くて切ない、あの人の声がした。

 くるくるとアルカナが変わるニュクス・アバターを、とにかく攻撃して防御して回避して、ようやく倒した。

 そして、近づいてくる、月。

 ニュクス。

 仲間からの力、絆を受け取って、召喚器は構えず、代わりに自分の親指と人差し指を立ててピストルの形を作った。

 封印を撃ち込む。大いなる封印。

 あの瞬間、私の中から全てが無くなり、力を失ったのを悟った。

 誰に言われずとも感じた。

 私の命は、終わるんだな、と。





 卒業式の日。

 アイギスの膝の上で微睡んでいた。

 アイギスが看取ってくれるのは、とても嬉しかった。

 最期だから、何か残さなきゃなって思うのに、何も思い浮かばない。

 ただ、あの人が、荒垣先輩が生きていてくれて良かったな、と思った。
 
 新しい日々を歩いて行って欲しい。

 ここで生きていくみんなには、たとえどんな事があったとしても、生きていって欲しいと思う。

 残していく者としての傲慢だけど。





 眠い。とても眠い。

 ああ、もう、さようなら、なんだ。

 ねえ。みんな。

 さようなら。





 でも陳腐だけど、みんなが私を覚えていてくれるなら。

 ほんの少しだけ、寂し、く……ない……よ――――















 

 

 
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