新年。
初詣に行く約束をした。
「明けましておめでとう」
待ち合わせはクリスの家の前。
インターホンを鳴らして少し待つと、クリスは出てきた。
赤と白の着物姿で。
私服で来たゴールドは、一瞬、見とれた。
「……変かしら?」
「あ、いや……」
ゴールドは頭を掻いた。
何か言おうとは思うが、喉の奥に引っかかって、上手く出てこない。
取り敢えず言った。
「……行くか。神社」
「ええ」
クリスが笑みで頷く。
いつもとは違う着物姿だと、新鮮に見える。
いつもなら蒲公英のように温かな微笑みなのに、今は牡丹のように華やかで、少しだけ艶っぽい表情だった。
隣を歩くクリスにドギマギしながら、神社に行く。
それほど有名ではないが、地元では昔から根付いている神社だ。
例年のように行列はできていた。
「今年も混んでいるわね」
「まあ正月だしな」
毎年の事なので、さほど驚かずに列に並ぶ。
人混みの後ろに並ぶと、また後ろに人混みができていく。
一月なので寒いはずだが、人の熱気で、その寒さもあまり感じない。
と、不意にクリスが言った。
「ゴールド、服の裾、摘んでもいいかしら?」
「え?」
「人混みが凄くて、はぐれてしまいそうだから」
クリスはゴールドの隣にぴっとりと寄り添っていた。
単に人混みで押されているのではなく、はぐれないようにと身体を密着させているらしい。
「……腕、組んでもいいぞ」
「いいの?」
「おう」
「有り難う」
クリスが腕を組んでくる。
また、距離が縮まった。
初詣の順番が回ってくる。
神様を呼ぶ鈴を鳴らして、御賽銭を入れて、心の中で願い事を唱える。
人混みの波は初詣を済ませると、屋台の並ぶ左か、お守りの売店がある右の方へと分かれていく。
二人はお守りの売店の方に行った。
「おっ、可愛い巫女ギャル!」
クリスは咄嗟にゴールドの手の甲をつねった。
「いててててっ」
もう、とクリスは溜息を零した。
「……お守り、何を買うの?」
「必勝祈願。クリスは?」
「私は健康祈願」
それぞれお守りを買った。
そのまま、周りの人波に逆らわず、沿うように歩いて、神社の外に出た。
「さてと……じゃ、明日は屋台だな」
「え?」
「今日はそれだから買い食いはやめとこうぜ」
ゴールドはクリスの着物を見て言った。
クリスは自分の服装を見下ろした。
「明日、また行こうぜ」
「……ええ」
クリスはにこりと微笑んだ。
「また明日」
「おう。――あ、そうだ」
「何?」
ゴールドはニカッと笑った。
「今年も宜しく」
「……ええ。宜しくね」
クリスは花開いたような笑顔を見せた。