「メリークリスマス!」

 ジョバンニ塾でクリスマスパーティーが開かれた。
 クリスは子供達のコップにノンアルコールのシャンパンを注いだ。
 ホールケーキを切り分けている間に、子供達は年嵩のゴールドに群がっていく。

「はーいみんな、ケーキよー」

 わーい、と子供達はケーキの載った皿を受け取っていく。
 子供達の無垢な笑みに、クリスは微笑を零した。

「クリス」
「何?」

 ちょいちょい、とゴールドが手招きをしてくる。
 クリスは素直にゴールドの傍に歩み寄った。
 ゴールドはクリスの左手をそっと持ち上げた。

「ちゃんと着けているな」

 クリスの左手首には、淡い水色のブレスレットがあった。
 昨日のクリスマスイブにゴールドが贈った物だ。
 一方のクリスは、ゴールドの手の体温を感じて、顔を真っ赤にした。

「顔、真っ赤」

 ゴールドは茶化すように言った。
 うう、とクリスは奥歯を噛んだ。

「……あ、そうだ」

 クリスは不意に思い出した。

「はい、これ。クリスマスプレゼント」

 クリスマス用の包装が施された直方体の箱を差し出した。

「お、さんきゅ」

 ゴールドはべりべりと包装を剥いだ。
 箱を開ける。
 中の物がきらりと輝いた。

「……すげ。格好良い」

 レザーネックレスだった。
 先端には小さなプレートが結び付けられている。
 プレートには外国の文字で何かの文章が掘られていた。
 Merry Christmas、ではない。

「これ、何て書いてあるんだ?」
「貴方が怪我しないように」
「それお前にこそ言うべき言葉だろ」

 ゴールドは小さく笑った。
 レザーネックレスを持ち上げ、

「これ、着けてくれよ」
「え」

 クリスは再び顔を真っ赤にした。

「やっぱりこーいうのは恋人が着けてくれる物だろ」
「……あとで、お願い」

 クリスは周りを見渡した。
 子供達がクリスマスソングを歌ってはしゃいでいる。

「分かってるよ。あとでな」

 ゴールドはにやにやと笑っている。
 クリスはぷいっとそっぽを向いた。


 


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