ゴールドは来る途中のフレンドリィショップで件の菓子を購入した。
ポケギアで連絡を入れ、今からそっちに行くと伝える。
家に着くと、クリスが出迎えてくれた。
「クリス、ゲームしねえか?」
「ゲーム?」
「そ。ゲーム。これを二人で銜えて食べ進めていくってやつ」
「ええ、いいわよ」
クリスはあっさりと頷いた。
無防備というか――もしかして、このゲーム自体を知らないのだろうか。
それならそれで好都合だ。
ゴールドは菓子の先端を、先にクリスに銜えさせた。
逆の方を口に銜える。
「……っ」
その時になってようやくこのゲームの本質というか趣旨というか目的に気づいたのか、クリスの顔が真っ赤になった。
ぽり、とゴールドは一口齧った。
ぽり、とクリスも一口齧る。律儀にゲームに付き合うつもりらしい。
と、不意にパキリと菓子が折れた。
「あ。失敗」
「し、失敗って?」
「さっき言っただろ、これ食べ進めていくゲームなんだよ。途中で折れちまったから失敗」
「どうすればいいの?」
「二人で完全に食べ進めて終わるまで、ひたすら繰り返す」
くりかえす、とクリスは鸚鵡返しに呟いた。
その顔に熱が走る。
「む、無理に決まっているでしょ!」
クリスは手近にあったベッドの枕を持ち上げ、にやにやと締まりの無い笑みを浮かべるゴールドの顔面に叩きつけた。
ゲーム続行は無理と言うが、そもそもそのゲームの内容を鵜呑みにして疑おうとしない。
無防備というか何というか。
信じられているという事はこそばゆいが、この無防備さは何とかした方がいい。
そう、ナンとかしないと。
ゴールドはクリスの枕攻撃で折れたりしないようにと、後ろ手に菓子の箱を庇いながら思った。