何であいつは学園とは逆方向に走ってるんだよ。


 追いかけている俺への嫌がらせか? そうなのか!?


「三之助――! 待て! そっちは学園じゃねえぞー!」


 叫びながら、足場となる太い木の枝を蹴り速度を上げる。身を空中に投げ出し、姿勢を前に傾けて木の枝と木の枝の間を跳躍して移動する。


「待て、ってば――!!」


 大声を張り上げる。が、十数メートル先を行く背中は何故か止まってくれない。聞こえていないのか、聞こえているのに無視しているのか。


 何しろ止まってくれないのでわからない。が、言えることはただ一つ。


 こちらは追いかけるしかないということだ。


「さぁーんのすけぇー!!」


 絶叫する。と、遥か前を走っている三之助がくるりと振り向いた。


 聞こえたのか!? と目を輝かせる。次の瞬間。


 三之助が、ちょいちょい、と手を振った。まるでこっちへ来いと言っているように。


 作兵衛は三之助とは長く友をやっている。だから遠目でも何となくわかった。


 あれは何だ、あれは、見当違いの方向に行く迷子を見るような哀れな目は! 違ェよお前が迷子なんだよ早くこっち来い!


「――おちょくってんのかお前はぁ――!」


 こうなったら追い着いて直接言うに限る。荒れた息を必死に整え、更に前へと加速した。

















「構われたいからわざと逃げてるってこと、何で作兵衛は気づけないのかな」


「作兵衛だしな。もう完全に三之助の保護者を自称しているからな」


「お前の保護者も自称しているんだぞ左門。しかし成程、それで三之助はその想いのベクトルは違うぞと言いたいわけだ。いつか伝わるといいな」


「……その前に作兵衛が過労で倒れるような気がするのは保健委員の僕だけかな」








 




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