あいつは俺のことなんかこれっぽっちも見ない。


 あいつが見ているのは己が進む道だけ。


 その先にある未来だけ。


 俺がどれだけ見つめていても、ギンギンに忍者をやっているはずのそいつは視線に気づかず振り向きもしない。


 あるいは、視線に気づかないくらい、俺の気配はあいつの中では馴染んだものとして存在しているのだろうか。


 それならばいい。


 それなら、まだ、俺の恋心は報われる。


 


「留三郎、最近、顔が赤いね。風邪?」


「違うに決まっているだろう伊作。奴の視線を辿ってみろ」


「あ、文次郎だ」


 俺は想いを伝えない。


 けど、心の中のこの想いは、火のように疼いて収まらない。


 そして、火が静まり小さくなったとしても、その熱は永遠に残り続けるのだろう。














 その熱で、俺の心を焼き尽くしてくれ。


 俺の心を消すためではなく、俺の心に焦がれという名の痛みを残すために。







 




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