伊助にプレゼントをあげた。


 ラッピングもリボンも何も無い、袋にさえ入っていない、剥き出しのそれを無造作に渡した。


 最初、伊助はいきなり腕を引っ張られ、いきなり掌を開かされ、その上にポンと置かれたそれにきょとんと目を見開いた。


 緩く首を持ち上げ、視線で「これ何?」と尋ねる。浅く傾いた首筋に、さらりと髪がこぼれた。


「プレゼント」


 それだけを言うと、伊助は掌の上に載ったそれを見つめた。


 そのまま十数秒ほど考えるが、自分は庄左ヱ門のように相手の考えを読む能力には長けていない、と判断し、考えるより訊いた方が早いと、率直に尋ねることにする。


「嬉しいけど、どうして? 誕生日でもクリスマスでも無いのに」


「何となく」


 答えにならない答えを返され、伊助はますます首を捻った。


 何て返そうかと迷う彼女の視界の隅に、キラリと何かが光る。


 それは虎若がくれたネックレスだった。半分のハート型のペンダントを細長い銀色のチェーンで通したそれは、シンプルながらも愛らしいデザインで、伊助の好みにも合う代物であった。


 窓から差し込む昼の光を受けて邪気の無い光を放つそれを見て、へにゃりと垂れ下がっていた伊助の眉尻が緩やかに上がった。


 素直に受け取って、貰っておこうと、そう思い、


「それじゃ、うん、――ありがとう」


 それが載った掌を丸めて握り込み、更にその上にもう片方の手を載せて、まるで宝物のように大切に包み込んだ。


 閉じていた蕾が緩やかに咲いていく中途のような淡い笑みを浮かべて、


「大事にするね。ありがとう」


 虎若限定の効果だが、見る者をとろとろに溶かす、一度見れば中毒性になる甘い笑みを浮かべた。


 今もその笑みに密かにほだされつつ、虎若は伊助の肩を軽く掴んで押した。回れ右して、と言うと、伊助は素直に後ろを向く。


 伊助の手を開かせ、その中からネックレスを摘み上げて首に掛ける。


 留め具で固定する。と、まるでそれを首輪のようだと思い、


 ――俺の思考、もうそろそろヤバくね?


 着込んだ制服の下、カッターシャツの下に隠した、伊助のそれと合わせて完全な一体型となる半分のハート型のネックレスにそっと触れた。

















 

 
 告白する勇気は無いくせに、こういうことばかり思いつける自分がほとほと情けなくて。


 でも嬉しいと、そう思ってしまう。
 



 





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