「伊助」


「何?」


「これ」


「ん……携帯? 誰の?」


「俺の」


「えっ、虎の?」


「……俺がホワイト持ってたら変か?」


「いや、そういうわけじゃないけど。でも緑とか青とか、そういうイメージだったから……てか携帯、オレンジじゃなかった?」


「買い換えた」


「いつ?」


「昨日」


「昨日? 昨日って……」


「――伊助と両思いになれた記念。だからさ伊助、この新しい携帯にお前の番号とメアドを入れといてくれ。……最初はお前がいいんだ」


「う、うんっ」


「騙されちゃいけないよ伊助ー。虎、前の携帯にいーっぱいいろーんな女の子のメアドを登録していたんだからぁー」


「そうだよ伊助ー」


「兵太夫に三治郎。……でも、私は……」


「……この携帯に登録する女の子は一人だけ。伊助、お前だけだよ。……言葉を間違えたな。伊助は『最初』じゃなくて『唯一』だ」


「わーお! 虎、すごい殺し文句!」


「三治郎、お前どっちの味方だよ」


「だって兵ちゃん、虎は昨日これを買い換えたんだよ? 甘やかさないようにって親御さんから最小限のお小遣いしか貰えていない、佐武衆の跡取りだから何かあったら危険だってアルバイトも許されていない虎がだよ? ――きっと土下座してお小遣いを前借してもらったんだよ。ねえ? 虎、そうなんでしょ?」


「……まあ、うん」


「虎……」


「……ふん。本気ってこと? 言っとくけどは組のアイドルを泣かせたらは組全員から折檻だからね」


「あれ? 兵ちゃん、伊助はお母さんだよ?」


「違うよ三治郎。……伊助はアイドルだ。何せ、洗濯、料理、掃除、裁縫、編物、その他諸々の家事スキルを備えていて、かつ可愛くて笑顔も素敵でとにかく全てが魅力的。そんな伊助はまさしくは組のアイドルと呼ぶに相応しい。だろう!? 三治郎!」


「そうだね兵ちゃん! 僕の認識が甘かった……! 伊助はお母さん兼アイドルだよ!」


「二人とも、そんな……」


「伊助は俺の彼女だぞ。いや嫁だ! 待ってろ伊助、今、婚姻届を貰ってくる!」


「ま、まままま待って! 新婚さんもいいけど、私、その、恋人期間も充分に堪能したい……というか……」


「伊助、それを言うなら婚約者期間だろ」


「えええええあの待って待って話をすっ飛ばさないで私ゆっくりでもいいのに――!」
















「でも虎、何で急に伊助なの? 今まで適当な女の子と適当に遊んだりしていたのに」


「……いや何か、前の彼女がいる間から急に伊助が気になり始めて……。すごく女の子らしいというか、家庭的というか、みんなはお母さんって呼ぶけど俺はどっちかというと嫁扱いしたいというか見ているとムラムラするというか――」


「伊助を泣かせたら庄左ヱ門に言いつけるぞ。……馬鹿虎」








 





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