愛おしいとか切ないとか、言葉で言っても足りないんだ。
唇を寄せて、重ねて、ついばみ、離れると、何故か心がきゅうっと縮こまる。
心臓は痛いくらいどきどきしているのに、心は甘く苦いくらいに締めつけられて。
それが愛しさだけじゃなく、切なさも含んだ感情だと気づいたのはいつだっただろうか。
「……虎」
君がすぐ近くにいる。
釣られて瞬きをしてしまうくらいの近い距離。
薄く涙をたたえて潤んだ瞳の奥の輝き一つ一つが鮮明に見える。
「……何かさ」
伊助が傍にいる。
そのことに気づく度、背中が震える。何かが駆け上がる。
俺にとって一番愛しい人は、俺が望めばキスできるくらいの近い距離にいる。いてくれている。
それが嬉しい。
「……キスってさ。何回しても照れるよな」
「ふふっ、そうだね」
離れてから照れるふたり
「虎とのキス、すごく嬉しい」
「俺は伊助がそう言ってくれることが嬉しいよ。……勿論、キスも好きだけどな」
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