「今、噂の彼女、二郭伊助さんと熱々でラブラブな仲の虎若に直撃! ズバリ! 好きなキスは何!?」
「全部」
掌を丸めてエアマイクを作り、おどけたように言った団蔵を尻目に、伊助が作ってくれた弁当を食べつつ虎若はさらりと答えた。
体躯が大きいせいか、妙な貫録まである。団蔵の横にいた兵太夫が「ケ」と呟きを吐き捨て、
「惚気かよ」
「いや事実」
「世間一般的には惚気なんだよ!」
えー? と首を傾げつつ、ズズ、と水筒のお茶を啜る。
「んーまあ、強いて言うならバードかな」
「鳥?」
「鳥が啄み合うようにするキスのことだ。お子ちゃま団蔵」
「俺、お子ちゃまじゃねえよ!」
「でさー、虎若、何でバードキスが好きなの?」
割り込んできた三治郎が笑顔で尋ねる。虎若は視線を少し上に上げ、何かを思い出すような眼差しで、
「まず普通の重ね合うキスは、まあ好きなんだけど物足りないんだよな。で、ディープは俺が満足する前に伊助が大抵ギブアップしちまうんだよ。だから中間のバードキスだと伊助の体力も保つし俺もそこそこ満足する、と」
「スゲェ理論的に聞こえるけど良く良く考えてみればただのエロ話だよな」
「伊助、まだディープキスに慣れてないの?」
「三治郎勇者!」
「最近は途中までは一緒にノってくれるんだけどな。でも大抵は疲れて伊助が俺の肩を叩くなり胸を押すなりして中断するのがお約束」
「バードキスだと最後の方までやってくれるんだ?」
「ああ。あとこの前、いきなり跪いて手の甲にキスしたら飛び上がって跳ねて挙動不審になってたけど最後は嬉しそうに笑ってくれてた。――あれは可愛かったな」
「キスマークとか残す?」
「残すよ。鎖骨とか背中とか太腿とか。鎖骨、最高だよな。あのエロいラインがたまらない」
「話が脱線してるぞ二人とも!!」
団蔵が現実へ戻れと訴えるようにバンバンと机を叩く。
三治郎はにこにことしつつ、
「とにかく伊助とならどんなキスでもいいんだ?」
「ああ」
好きなキス
「でも、できるならディープに最後まで付き合って欲しい」
「伊助は頑張ってるよ。お前の体力が無尽蔵なんだ虎若……」
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