俺は伊助を正面から抱き締めるのが一番好きだ。
伊助も俺を真正面から抱き留めるのが一番好きらしい。
で、二番目に好きなのが、座っている俺の後ろから抱き着くこと。肩を通して首に腕を回して、ぎゅうっとして、距離を縮めるのがいいらしい。
まあ俺も伊助に後ろから抱き締められるのは好きだ。だって何かいい匂いがするし。背中に何かむにむに柔らかいものが当たるし。役得、役得。
「ね、虎」
「ん?」
今日は機嫌が良いのか、伊助は縁側に座る俺の背中に抱き着いたまま動こうとしない。
中庭で遊んでいたは組のみんなが信じられないものを見る目で伊助を見る。そりゃそうだろうな。伊助は恥ずかしがり屋だから、みんなの前であからさまにイチャついたりすることは滅多に無い。
ということは、今日はみんなの視線に晒されてもイチャつきたいくらい機嫌が良いのか。
それとも周期的にやってくる『甘えたい週間』だろうか。
――まあどっちでもいいや。
何せ可愛いんだからどっちでもいい。あと背中の膨らみがむにむにしていて最高。伊助の身体って、何でこんなに柔らかくて、こんなにいい匂いがするんだろう。
「あのね」
「うん」
甘えてくる伊助は最高に可愛い。見た目が可愛いから、というのもあるけど、一番の理由が俺に甘えてきてくれるからだ。
だから伊助の笑顔はいつも、俺にはとろける太陽のように見える。
「大好き」
ちゅ、と、頬に何かが触れた。
思わずきょとんとして、首を横に曲げて伊助を見る。
彼女は屈託無く笑っていた。
その笑顔に癒される。心が躍る。
釣られるように、俺も笑う。
「俺も大好きだよ。伊助のこと」
「へへっ」
またぎゅーっと抱き着いてくる。ごろごろと猫のように頭を肩に擦りつけて甘えてくる。
凄く可愛い。
周りでじとっとした目や呆れた眼差しで見てくるクラスメート達のことは取り敢えず後回しにしておいて、俺は腕を伸ばして伊助の頭を撫でた。
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