僕は幼い頃から伊助の傍にいた。


 近所の家に産まれた子供達の間では、僕が伊助が一番気が合っていたし、多分、伊助もそうだと思う。


 大抵の幼い子供ってのはうるさいものだけど、僕はそれが煩わしくてたまらなかったのだ。


 ゲームをするより本を読む方が好きで、外で駆け回るよりも家の中で遊んでいた方が楽しい。


 伊助も僕と同じタイプだった。性別が異なっていても僕達はすぐに仲良くなり、良く図書館や近所の公園へ遊びに行っていた。


 小学校、中学校を卒業しても僕達の仲は変わらなかった。


 伊助は僕を「庄ちゃん」と昔と同じように呼び、たまに家に遊びに来ては宿題を一緒にやったり、本を貸しあいっこしたりしている。


 性根が物静かな僕達は気が合っていた。僕は男友達といるよりも伊助といる時の方が落ち着けた。


 そんな伊助は中学校に入学した辺りから髪をストレートロングからポニーテールに纏めるようになった。


 校則が厳しくて生徒指導の先生がうるさいからだろう、と小学校からのクラスメート達は勝手に思っていたようだけど、伊助は元より髪を流しているより纏めている方が好きなのだ。


 僕は伊助のそんな些細なことに気づいててしまうくらい、伊助のことを見ていた。


 だから、すぐに気づけた。


 伊助に好きな人ができたこと。


 それが僕じゃないこと。


 伊助が好きな人は、最初、別の女子と付き合っていた。適当にモテる奴から適当に遊んでいたのだろう。仲睦まじく、とまではいかないけどかなり引っ付いていた。


 何で実直で誠実な伊助がそんな奴を好きになったのか、僕には未だに分からない。適当な遊び人に惚れるほど伊助は暇じゃないし、周りの女子達のように『格好良い人なら誰でもいい』と思春期らしくがっついて彼氏を求めるような性格でもないのに。


 悶々と考え続けながら、僕は一つの決断を迷っていた。


 伊助に告白するか否か。


 僕はもう随分と前から伊助のことが好きだった。最初は幼馴染みとしての友愛が徐々にほのかな恋慕になり、去年辺りからは完璧な恋心になっていたのだ。


 適当なあいつより僕の方が伊助に相応しいだろうし、伊助もきっと僕を男として見てさえくれれば好きになってくれるかもしれない。


 そんなふうに――安易に考えていた。


 告白してきたのは伊助の好きな相手からだった。いつの間にか彼女と別れて、いつの間にか伊助に目を付けて、いつの間にか告白していた。


 そうして二人は付き合い始めた。


 伊助はあまりベタベタと引っ付くのが好きじゃない。でも要所要所でイチャついてはいた。


 例えば、ふと目が合った時。伊助は端から見た僕がとろけてしまうんじゃないかと思うくらいの甘い視線を相手に投げかけていた。相手の男子はだらしない笑みでそれに応えていた。


 ああ。もう、全く。何てことだ。

















 いつの間にかもう、追いつけないところまで差を広げられていたなんて。
 


 



 





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