「席に着けー。出席を取るぞー」
今日は三月十四日。
「みんな、一ヶ月前は有り難う。お返しだ」
ホワイトデーだ!
「今回は山田先生も作って下さったぞ。はい」
十二個の袋が順々に手渡されていく。
蕾のように窪めた掌に、ぽすん、と収まる巾着袋。
「中身は同じだ。味や色は違うかもしれないけどな」
紐をそっと開く。
中に入っているのは、それぞれ小さなビニール袋に入った、飴玉と金平糖だった。
飴玉と金平糖、という組み合わせに乱太郎の頬が緩む。
「何だか懐かしいですね」
ビー玉か水槽にも似た綺麗な色の飴玉と、小さな光を放つ金平糖。
乱太郎が微笑むと、早速、飴玉の一つを頬張ったしんべヱが、
「ひゅごい、ふぇんふぇえ、ふぉれふふっはんふぇふか?」
「しんべヱ、食べながら……喋るなよ。あ、いや舐めながら?」
食べるの勿体ないな、と思い、なかなか他の面子のように摘めない庄左ヱ門が小さく笑う。
「お菓子は買ったんだ。で、巾着袋を」
「作って下さったんですね〜。流石は先生」
によによときり丸が笑う。
「みんな色違いだ」
近くにいた虎若や金吾と巾着袋を見せ合いっこしていた伊助がにこにこと破顔する。
「中のお菓子を食べ終えたらそのまま使えますね」
「僕、ナメさん入れるね〜」
「いや喜三太、それは駄目」
「清八に自慢しちゃおっと」
「先生、お裁縫も得意だったんだね」
「ね。売り物みたいにすっごい良くできてる」
虎若、喜三太、金吾、団蔵、兵太夫、三治郎が口々に言う。
きゃいきゃいと騒ぐは組の良い子達に、そっと微笑む。
「有り難うな」
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