一年に一度だけ会える恋人達にあやかって、自分の願いを書いた短冊を吊す。


 今までは何て他力本願なイベントなんだろうとか、こんなちっぽけな短冊で叶うなら苦労しないとか、自分でも呆れるくらいに可愛いげのない考えを持っていた。


 でも、今は――。










「虎、何て書いた?」


 筆ペンで短冊に願い事を書いていた伊助が笑みで尋ねてくる。


 虎若はぴらりと自分の分の短冊を見せた。


「なになに……え」


 伊助の顔が固まった。


 んー? と言いつつ横から団蔵が覗き込む。そして、ぶっと噴き出した。


「お前、スゲェな虎……」


 虎若は笹の先端に短冊を吊るした。他のクラスメート達が、きゃっきゃと騒ぎながら短冊を吊るしたり、飾りを作って付けているのを眺めつつ、


「最初はさ、『火縄銃の腕が上がりますように』とか『みんなでずっと一緒にいられますように』って書こうと思ってたんだよ。けど火縄銃の腕は祈りじゃなくて努力次第だし、大抵の願いはは組のみんなが関わっている内容だからさ。もうみんなが書いているだろうと思って」


「まあ、だろうな」


 団蔵は他の短冊を見た。例えば乱太郎は『みんなが怪我をしませんように』で、三治郎は『みんなでずっと一緒に』と書いてある。


 団蔵は伊助から筆ペンを借り、自分の分の短冊に願い事を書いた。


 みんなの願いが叶いますように、と。


「贅沢だな」


「でも、これできっと全員の願いが叶うようになるよ」


 微笑んで伊助が言う。そうだな、と虎若は甘い笑みを返した。


 夏の夜、温く緩い風が吹き、虎若と伊助の吊るした短冊が揺れた。


『俺と伊助の愛を邪魔する全てのものが消え失せるように』


『虎若が怪我をしませんように』










 一年に一度だけ会える恋人達にあやかって、自分の願いを書いた短冊を吊す。


 今までは何て他力本願なイベントなんだろうとか、こんなちっぽけな短冊で叶うなら苦労しないとか、自分でも呆れるくらいに可愛いげのない考えを持っていた。


 でも、今は、切に願うことができるこの日に感謝している。


 どうか願いが叶いますように。


 届きますように。


 天を巡る天の川に、祈る――。





 





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