都会のポケモンセンター。
利用者は多いから可能性はあると予測してはいたが、予想はしていなかった。
「やあ」
「あ。シゲル」
ポケモンセンターで思いがけず幼馴染みと再会した。
リカはサトシと同じように、トレーナーとして旅を続けている。
「サトシには会えたかい?」
「この前、大会で会えたよ」
「元気そうだった?」
「うん。元気そのものだったよ。あ、さっき言った大会の事なんだけど、予選で別ブロックに振り分けられてね――」
二人は裏庭に移動しながら近況を語り合った。
裏庭はポケモンが休む場所であり、遊び場所として解放されている場所だ。
二人がモンスターボールを開放すると、ポケモン達が思い思いに遊び始めた。
二人の頭上に、ぬっと影が差す。
フシギバナだ。
リカの手持ちの中で、リーダー格のポケモン。
フシギバナは二人の横にある、大きめの木の下でどっしりと腰を下ろした。
リカがその下にレジャーシートを敷き、フシギバナの傍らに寄りかかって座り込む。
リカの休憩様式だ。
「シゲルもこっちおいでよ」
「ああ」
隣に腰を下ろすと、昼下がりの暖かい風が吹き抜けた。
フシギバナはのんびりと日光浴に興じている。
くああああ、とフシギバナが欠伸をした。
「リカのフシギバナはのんびり屋さんだね」
「うん。私に似たかな」
リカはフシギバナを撫でた。
フシギバナは瞼を閉じた。
「この前、サトシと会ったって言ったでしょ」
「うん」
「その時、実はロケット団に絡まれたんだけどね。サトシのピカチュウの10万ボルトと、フシギバナのソーラービームで追い払ったの」
リカは嬉しそうに笑った。
「いきなりロケット団が出てきて、私は凄い驚いたんだけど、サトシはあまり驚いてなくてね。またか! って感じで」
そういえば、サトシといると必ずロケット団に絡まれるような気がする。
でも、逆にこちらがトラブルを引き連れてきてしまう場合もある。
その辺りはトレーナー同士、持ちつ持たれつとでも言うべきなのだろうか。
「慌てて私もフシギバナにソーラービームって言ったんだけど。でも本当に驚いたなあ。ロケット団にも驚いたんだけど、ロケット団に慣れているサトシにも驚いた」
フシギバナの目がそっと開く。
リカはその目線だけで、フシギバナの言葉を読み取ったらしい。
「そうだよね。サトシと一緒にいると、何故かいつもロケット団に絡まれるんだよね。逆に言えば、サトシは何があっても大丈夫だよね。きっと」
フシギバナの瞼がそっと閉じられる。
シゲルの目には頷いたように見えた。
「また会いたいね」
リカの頬は紅潮している。
シゲルはリカに気づかれないよう、そっと溜息をついた。
今、リカの頭の中を占めるのは、サトシの事なのだろう。
僕の頭の中にあるのは、リカの事だけど。