『明けましておめでとう御座います! 初詣の人で、神社は凄い行列です!』
ヒカリの家の一階で、テレビから生中継の声が響いていた。
映像に映る神社は、レポーターの言う通り、大行列ができていた。
「初詣、いつ行く?」
「三日」
「だよな。人混みも少しはマシになっているだろうし」
その映像を眺めながら、フタバタウンの子供二人は暖房の効いた室内でアヤコが作ってくれた善哉に舌鼓を打っていた。
「おいしい。ママ、有り難う」
「有り難う御座います」
「どう致しまして。雪はやんだけど、やっぱり寒いわね」
「シンオウだからね」
ヒカリは善哉を啜った。
昨日の深夜から降り始めた雪は、昼頃の今ではやんでいる。
が、それでも寒い。慣れてはいても寒い。
「二人とも、この後はどうするの?」
「うーんと……」
ヒカリは中空を見上げて思案した。
しかし、結局は何も思い浮かばなかったのか、ジュンに目線を向けた。
「ジュンは?」
「このまんまゆーっくりしたい」
「私も」
ヒカリは窓の外を見た。
雪が降っている。
「あ、そうだ」
「んー?」
「明けましておめでとう」
ヒカリはぺこりと頭を下げた。
「……おう。明けましておめでとう」
言ってから、ジュンは「あ」と声を漏らした。
「アヤコおばさんも。明けましておめでとう御座います」
「はい、明けましておめでとう」
アヤコは微笑みながら、二人の椀を回収した。
キッチンに戻って、二杯目の善哉を注ぐ。
ほわりと甘い匂いが漂い始めた。
「ゆっくりしていってね。ジュン君」
「有り難う御座います!」
ジュンは満面の笑みで椀を受け取った。
二杯目の善哉を食べ始める。
ヒカリも二杯目を受け取って食べ始めた。
アヤコも自分の分の善哉を注いで、テーブルの前の椅子に座る。
なごやかに談笑を始めたジュンとアヤコを見て、ヒカリは思った。
――何かジュン、うちの家族の一人みたい……。
他の幼馴染みもそうなのだろうか。
内心で首を捻った。