「ヒカリもジュンも凄いよね。ポケモンリーグ制覇したんだってさ」
ナナカマド博士の研究所に、今日は二人の客人がいる。
ヒカリさんとジュンさんだ。
ジュンさんが興奮した様子で身振り手振りを交えて話す横で、ヒカリさんがポケモン図鑑を差し出す。
ナナカマド博士がそれを受け取り、データを確認する。
その目が見開かれた。
「ほう! 素晴らしい、完成も間近だな」
え? そんなに凄いんですか?
「マジで? 見せて見せて!」
ジュンさんがナナカマド博士の手からポケモン図鑑を取り上げる。
データを見たジュンさんが目を見開き、
「マジかよーっ!?」
ぐったりと項垂れた。
その手からポケモン図鑑を取り上げて、ヒカリさんがナナカマド博士に戻す。
「ポケモンリーグ制覇も目標でしたけど、ポケモン図鑑完成も私の夢です。怠った事はありません」
ふふん、と自信たっぷりにヒカリさんが言う。
「凄いなあ。ポケモンリーグ制覇もポケモン図鑑完成も、どっちとも両立させてたんだ」
三人のための飲み物と菓子を用意しながら、マスターが感心したように溜息をつく。
以前、マスターはポケモン図鑑を取り返してもらうため、ヒカリさんに協力してもらった事がある。
それ以降も、ヒカリさんとヒカリさんのポケモン達には何度も助けてもらった。
僕達もバトルはしているけど、ヒカリさんのセンスはまた一味違う。
ヒカリさんのポケモン達も、バトルで突き進むヒカリさんについていっている。
でも、楽しそうだなって思う事はあるけど、羨ましいって思う事は無い。
だって、こういうの何て言うんだっけ、畑違い?
マスターとヒカリさんは目指しているものが違う。
だから、違う分野でお互いを補い合っている。
現にヒカリさんにポケトレの使い方を教えたのはマスターだしね。
「お茶が入りました」
三人分のマグカップをお盆に載せて、マスターが持っていく。
「あ。有り難うコウキ」
「さんきゅー」
ふぅふぅ、と息を吹きかけてヒカリさんがマスターの淹れた飲み物を飲む。
と、ヒカリさんの表情がほわんと緩んだ。
「やっぱりおいしいな、コウキの淹れてくれた飲み物は」
「本当? 嬉しいなあ」
マスターがえへへと微笑む。
うん。確かにマスターの作ってくれるフーズはおいしい。
温厚で優しくて、マサゴタウンに定住していて、御料理が上手なマスター。
アグレッシブでマイペースで旅を続けるジュンさんともヒカリさんとも違うけど、僕はマスターが大好きだ。