キングドラの特性はすいすいかスナイパー。
 どちらとも厄介だ。
 加えて、キングドラは水タイプではあってもドラゴンタイプを併せ持っているため、電気タイプの技もあまり効かない。
 ただし、キングドラが水タイプの技を使うなら、電気タイプのエレキブルはやはり有利だ。
 という考えを読まれていたらしい。 

「キングドラ。あくび」
「! エレキブル!」

 まともに食らってしまった。
 まだ少しの間なら動けるが、眠り状態に陥った際にキングドラの攻撃を受けるのは危険だ。

「戻って!」

 エレキブルをモンスターボールに戻す。
 ユリは指先で素早く別のモンスターボールを摘み取った。
 スイッチを押して拡大させ、放つ。

「ミロカロス!」

 優美な仕草でミロカロスが頭をもたげる。
 ユリがミロカロスに指示する初手は大抵これ。

「どくどく!」

 キングドラの足元から紫色の液体が染み渡る。
 毒状態に陥った。
 あとは半ば持久戦だ。

「りゅうのいぶき!」
「アクアテールで潰して!」

 ミロカロスが水を纏わせた尻尾を叩きつける。
 相殺し、りゅうのいぶきは消え、ミロカロスの尻尾の水も消える。

「あくび!」
「守る!」

 ミロカロスがキングドラのあくびを防ぐ。
 時間は少しかかってしまうが、あくびを食らうと必ず眠り状態になってしまう。
 また、『守る』は連発するにつれ成功率が下がるため、この直後の隙を的確について攻撃しなければならない。
 ミロカロスにもそう教えてある。
 ユリが指示を出す前からミロカロスはすうっと息を吸い込んだ。

「りゅうのはどう!」

 ミロカロスがドラゴンタイプの衝撃波を繰り出す。
 キングドラに直撃した。
 効果抜群。
 しかし、ミロカロスはそれほど攻撃力が高いポケモンではない。
 キングドラはよろめきこそしたものの、体勢を立て直した。

「りゅうのいぶき!」
「アクアテール!」

 キングドラは水タイプだが、同じ水タイプが相手であるためか水タイプの技は出してこない。
 先程のどくどくは効いたはず。
 しかし全く油断できない。安心できる暇は無い。
 心臓がドクドクと弾んでうるさいくらいだ。
 これがジムリーダーとの対戦。
 イブキとのポケモンバトル。

「あくび」

 アクアテールで体勢を崩したミロカロスにキングドラが放った。
 ミロカロスの目が細くなる。

「ミロカロス!」
「りゅうのいぶき!」

 ミロカロスにぶち当たる。
 たった一撃のはずなのだが、ミロカロスの身体はぐらりと傾き、倒れた。
 恐らくは、特性スナイパー。

「ミロカロス、戦闘不能!」
「有り難う」

 ユリはミロカロスを戻した。
 モンスターボールをベルトに戻す。

「随分とタイプが偏っているわね。スターミーも水タイプじゃない」
「色々と考えた結果ですよ」

 ユリは次のモンスターボールを出した。
 イブキはドラゴンタイプのジムリーダーであるため、今回はそれを考えた上での編成だ。
 氷タイプのポケモンはたくさん持っている。
 しかし、今回はタイプではなく、バトルの経験の多さやプレッシャーへの強さなどの要素を加味した。
 スターミーは速さを活かしての即行タイプ。
 ミロカロスは防御力とどくどくを活かしての持久力タイプ。
 いざとなればどんなタイプでも何とかでき、実際にこれまで何度もゴリ押しで勝ってきた経験もあるため、敢えてタイプの重複も飲んでこの二匹を入れた。
 ユリはモンスターボールを放った。

「ゲンガー」

 にしし、とゲンガーは口を釣り上げて笑う。
 ユリの目から見てみると、大分ノっている。

「キングドラ、冷凍ビーム!」
「ゲンガー、シャドーボール!」

 ユリは声を張り上げる。

「連発!」

 ゲンガーがシャドーボールを撃ち出した。
 一発、二発、三発、四発。
 速い。
 一発自体の作りは荒く、威力も落ちてはいるが、それでも次々と撃ち込まれては身動きが取れない。
 ゲンガーの表情はニタニタとした笑みのまま変わらない。
 軽々とシャドーボールを放っていく。
 五、六、七、八。
 キングドラの身体が傾いた。
 シャドーボールの狙いが逸れる。

「冷凍ビーム!」
「かわして!」

 ゲンガーがひょいっと冷凍ビームを避ける。

「もう一回!」

 すぐさま追撃が来た。
 ゲンガーは片足が床についていない。

「床に向かってシャドーボール!」

 即座にユリは指示を飛ばした。
 ゲンガーが下にシャドーボールを撃ち込む。ゲンガーの身体が宙に浮かんだ。

「キングドラ、――キングドラ!」

 不意にキングドラが倒れ込む。どくどくの効果が回り切ったのだ。
 ゲンガーはすとんと着地した。

「キングドラ、戦闘不能!」

 キングドラが戻される。
 イブキは最後のモンスターボールを手に取った。

「カイリュー」

 威圧感を放つドラゴンタイプの巨体が舞い降りる。
 これでイブキのポケモンは六匹目。
 最後だ。

「ゲンガー。――お願い」

 今日連れてきたポケモンは、トゲキッス、エレキブル、ハピナス、スターミー、ミロカロス、ゲンガー。
 最も付き合いが長いのはゲンガーだ。
 最初のマサラタウンから出発したカントー地方での旅を共にし、その後の旅でもずっと傍にいてくれたポケモン。
 バトルの経験も豊富だ。
 旅の途中、フスベジムに寄る事はできなかったが、ドラゴンタイプを主に扱うトレーナーもいたため、ドラゴンタイプとのバトルにも慣れている。
 ゲンガーはくるんと振り向き、ニッカリと笑ってみせた。


 

 
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -