ハクリューはドラゴンタイプ。
 カイリューの進化前だが、その能力値は決してあなどれない。
 なら。

「スターミー、冷凍ビーム!」

 先手必勝だ。スターミーが冷凍ビームを打ち出す。
 ハクリューはそれをひらりと回避した。

「電磁波!」

 スターミーの動きが鈍くなる。麻痺状態になったのだ。
 ハクリューが迫る。速い。流石はジムリーダーのポケモンというべきか。

「ドラゴンダイブ!」
「スピードスター!」

 スピードスターは必中の技。麻痺状態のせいで出は遅いが、ハクリューに確実にヒットした。ドラゴンダイブの狙いが逸れ、スターミーの真横に直撃する。
 床が抉れ、木材の破片が飛び散る。

「戻って!」

 スターミーをモンスターボールに戻す。
 麻痺状態でもゴリ押しで勝てるかと思ったが、このハクリューは駄目だ。予想以上に動きが速い。
 それに――。

「特性、自然回復ね」
「お見通しですか」

 このスターミーの特性はそれだ。今ので確実に麻痺は回復できたはず。
 ユリは別のモンスターボールを放った。

「エレキブル、――構えて!」
「冷凍パンチかしら」

 ユリは答えない。
 エレキブルが身構える。
 ハクリューが距離を詰めてくる。
 特性が電気エンジンであるエレキブルに電磁波は御法度。なら次に来るのは恐らくドラゴンダイブ。

「火炎放射!」

 違った。
 ハクリューが火炎放射を放つ。冷凍パンチを恐れての遠距離からの攻撃か。
 エレキブルが左の拳を構える。

「炎のパンチで受け流して!」

 左の拳に炎が宿る。エレキブルはそれを火炎放射に正面からぶち込んだ。
 拳に割かれて火炎放射が割れる。
 その隙にハクリューが迫る。エレキブルは火炎放射を受け止めているため、エレキブルには見えない。
 それが見える位置から指示を伝えるのがトレーナーの役割だ。

「エレキブル、構えて! 来るよ!」

 エレキブルが右の拳を構え、ぎゅっと力を込める。
 火炎放射が潰える。
 直後、その向こう側からハクリューが突っ込んでくる。
 超至近距離でのドラゴンダイブ。命中率が決して高いとはいえないドラゴンダイブでも、確実に食らってしまう距離。

「冷凍パンチ!」

 そこに、右の拳の冷凍パンチが直撃した。
 カウンター気味にぶち当たった攻撃にハクリューが弾き飛ばされる。
 ユリが支持するまでもなく、エレキブルは身構える。
 床の上に倒れ込んだハクリューは動かなかった。

「ハクリュー、戦闘不能!」

 これで三対六になった。
 ハクリューがモンスターボールに戻される。

「そのエレキブル、二刀流、というやつかしら」
「シンオウ地方で出会ったトレーナーに教わりまして」

 真似は悪い事ではない、と開き直って取得したものだ。
 以降、バトルで勝つ確率は確実に上がった。

「リザードン」

 またドラゴンタイプではないポケモンが出た。
 ユリはエレキブルの具合を素早くチェックした。ダメージは食らっていない。先程のバトルで身体の調子も出ただろう。

「エレキブル、そのままお願い」

 エレキブルが低い唸り声を上げる。了承の声だ。長い付き合いだから声音だけで分かる。

「エアスラッシュ!」

 遠距離からの攻撃。エレキブルのパンチ攻撃を食らわないためだ。
 エレキブルがエアスラッシュをかわす。
 両手の拳は既に握り込まれ、力が溜まっている。

 ――何とか倒しておきたい。

 イブキが繰り出しそうなドラゴンタイプのポケモンは大体予想できる。
 カントーとジョウト地方限定のドラゴンタイプ。
 ハクリューがもう一匹か。カイリューは絶対に入っているだろう。
 厄介なのはキングドラだ。正直、物凄く嫌だ。
 だが倒さなければならない。
 イブキは再度エアスラッシュを指示した。
 エレキブルは再度避ける。
 距離を置いてエアスラッシュを続ける気か。
 否。
 リザードンの両手の爪と牙が気になる。火炎放射か、大文字か、あるいはドラゴンクロー辺りを覚えているのかもしれない。
 いずれにせよ、エアスラッシュを繰り返されたら埒が明かない。

「エレキブル、防御!」

 エレキブルが腰を低くし、両腕を縦に構えて防御の姿勢を取る。
 一撃を食らっても踏ん張るための体勢だ。

「10万ボルト!」

 エアスラッシュを放った直後のリザードンに雷撃がヒットする。
 代わりに攻撃を放った直後のエレキブルも動けず、エアスラッシュを食らった。
 衝撃でエレキブルの身体が後ろに下がる。が、闘志はまだ衰えていない。
 リザードンは弱点である電気タイプの技を食らってふらついている。

「もう一回、10万ボルト!」

 敢えて距離を詰めず、遠距離からの攻撃を食らわせる。
 二撃目が当たったリザードンはよろけ、ぐらりと傾き、倒れ込んだ。

「リザードン、戦闘不能!」

 イブキがリザードンをモンスターボールに戻す。
 ユリも、エレキブルを戻した。

「有り難う」
「強いわね」

 イブキから声がかかる。
 ユリは両手の掌でモンスターボールを包んだ。

「みんな、私の旅に、我儘に付き合ってくれた、相棒です」
「正直に言うわ。――貴女、今まで見てきた中で最高峰のレベルのトレーナーよ」
「有り難う御座います」

 ユリは率直に礼を述べた。
 頭は下げない。
 次のモンスターボールを取る。

「さ、行くわよ。――キングドラ!」

 出た。凄く厄介なポケモン。
 ユリは呻きたくなった。
 


 

 
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -