0組の武器は大抵が飛び道具。

 リーチが短い武器でも遠距離ができるアビリティがあるし、魔法もある。

 だから大半の奴は遠距離戦ができる。

「……何。この怪我」

「……打撲、と……出血」

 けど、エイトは違う。

 ジャックやクイーンと比べても極端すぎるくらいにリーチが短いし、かといって魔法が得意なわけでもない。

 だから戦闘の時は近距離戦の更に肉弾戦で行く。

 だから怪我をする確率も高い。

 だから毎回こう思う。

「……いい加減、別の武器にしなさいよ」

 彼の主義を否定するだけって分かってはいても。

 でも、それで傷つくくらいなら、敢えてその主義も否定してやる。

「……それは、できない」

 それを分かっていて、即答するあんたもあんたね。

 こっちがこれ以上強く言えないって知っていて。

「……ふん」

 ムカつく。

 恋人のお願いより、自分の主義の方が大事なんてさ。

 でも、まあ、いいわよ。

 あんたが傷つく前に、あんたを傷つけようとする奴は、全部あたしが殺すから。

 でも。

「――っと、……ケイト?」

 あんたの腕は、身体は、誰かを傷つけるためじゃない。

 あたしを抱き締めるため。

 その事だけは忘れないでよ。

 これだけは譲れないんだから。

「血塗れでも汗臭くてもいいから。クイーンやレムにケアルかけてもらう前に、シャワー浴びる前に、終わったら真っ先にあたしに会いに来て」

 すぐ近くの耳元で呟くと、エイトは強く抱き締めてくれた。

 頷きより、言葉より確かな、力強さ。

 切ないくらいに、心地良かった。


 


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