今日も新聞各社の見出しは、怪盗メアリーのことで持ちきりだ。
誰もメアリーが俺の妹をしていたとはよもや思うまい。
俺は花束片手に両親の墓の前に立った。
気付けば戒名の刻まれた卒塔婆が、一本増えている。

「ごめん、京子」

お前を世界で一番かわいいと、愛しいと思っていたのに、俺は何を見ていたというのか。
京子が苦しんでいることにも気付かず、メアリー逮捕と走り回っていたのがバカみたいだ。

「ごめんな」

花束を置いて、その場にうずくまる。
泣いても許してくれないだろう。でも、俺は自分の情けなさにただ涙を流した。

「もし、響さんですかな?」

嗚咽を漏らす俺のところに、この寺の住職がやってきた。
手には、手紙を持っている。情けない顔で泣く俺に、住職は何も言わずにただ手紙を差し出した。
いったい、誰から?
手紙の裏を見れば、響京子の文字。
俺は慌てて封を切る。
薄青の便箋に踊るのは、確かに京子の筆跡だ。

京子から最後の手紙。
内容は、俺への日々感謝の気持ちやらなかなか面と向かって言えないことなどが連ねてあった。
そして、最後の結びに俺はまた涙腺を崩壊させることになる。

『私は、刑事のお兄ちゃんが大好きです。だから、お仕事がんばってね。京子より』

刑事をやめようと思った心を見透かされたようで、恥ずかしくなる。
こんな俺でも大好きと言ってくれる京子の気持ちを汲んでやらなくてどうする。
京子の手紙を手に泣く俺の後ろで、住職が口端を上げていることなど今の俺は気付かない。

「まだまだ私を追いかけてもらわなくちゃ困るのよ、響刑事」

などと呟いているのも、当然のように気付かなかった。



end.
Submitted to fish earさま
written by Robin.





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