・ 手から力が抜けていく。眼もかすんで見えずらい。男が俺の眼前に足を揃えて佇んだ。 死ぬのか、と問われる。答えはノーであり、イエスでもある。俺の体は死ぬのだろうが、魂は生きる。そう答えれば男は鼻を鳴らして笑った。滑稽だと。 この世に科学が根ざしている限り魂が生きることはありえない、とそう嗤う。なるほど。それもそうだ。俺は妙に納得して眼を閉じる。男の足が消えた。 神様はいるのかな。問えば、男がいるさと言った。 耳に入る音そのものが神様だとも言った。 男の声はそれきり聞こえなくなった。 耳鳴りがする。これが神様なのか。 解せぬが仕方がないのだろう。 私は小さく息をした。 もう、何も聞こえない。 魂だけが囁いている。 ← * → |