榊アレ



この萌えしか言わない武士道なんてドブに捨て置いた男は現在進行形で告白中です。
誰にってそりゃ画面から出て来ない彼曰く嫁にです。

「正直それを間近で見ているのはかなりいや本当に気持ち悪いデス」
「…?」
「いやこっち向かないでくだサイ、鳥肌立ちマス」

はっきり言って何故彼と友達として付き合っているのか理解しがたい。こんな存在だけで胸がムカムカする様な輩と。

「嫉妬…」
「ぶん殴りマスヨ榊くん」
「…萌え」
「聞けドM」

彼の頭の中ではどんな言葉も自分の良いようにすげ替える事が出来る様だ。グッ、と拳を握ってガッツポーズを作る彼を一瞥し、一人分だった空間に更にもう一人分増やす。その小さな動きにもギシリと座っているベッドは悲鳴を上げた。

「次萌えって言ったらその手壊しマス」
「……萎え?」
「言い間違えマシタ、同じ系統の言葉を使うな」

口を開けば萌えだの萎えだの嫁だの、他の言葉は言えないのだろうかこの男は。ガッツポーズを解いて思案する様に首を傾げ、手に持っていたゲーム機にカツリと爪を当てた彼に顔をしかめる。

「榊くん?」
「…………」

突然、何か考えが出て来たのか榊くんはゲーム機の電源を落として鞄に丁寧にしまった。何処か作法を感じるのは彼の一つ一つの動作の癖だと思われる。

「さか、」
「わかった」

口に彼の手が置かれ、不本意ながらギクリと体が固まる。条件反射を装って殴ろうかと一瞬思ったが手がシーツを固く握って離さない。
誰だこれ。ギシリとなるベッドに意味無く答えを求めてしまう。

「な、に…」

いつの間にかベッドの端まで後退っていた様でトンッと壁が背中に当たる。好機とばかりにシーツを離さない手を取られ、指の間にキスを落とされ、近付かれた。
なんだこれ本当に誰。
もう片手も取られてキスを落とされ、ひやりとした壁に両手とも押し付けられる。首に唇を押し付け、小さく噛み付かれた。

「……っ」

喉にぬるっとした物が押し当てられ、それが滑る様に動く。顎まで来た舌に目を閉じれば一瞬離れ、今度は固く閉じた唇を無理矢理開いて咥内を蹂躙する。嫌な程に手際が良い。
縋る様に絡まっている彼の手を握りしめれば、暗い視界で彼が満足げに目を細めたのが手を取る様にわかった。

「っ…!」
「…真剣」
「なに、が…」

ようやく終わった長い口づけに息を乱せば、不愉快な事に全く息一つ乱れてない彼の言葉が聞こえた。半ば睨みつける様に見て尋ねれば、滅多に開かない目が開いて、息が詰まるぐらいの笑顔が笑い声を漏らした。

「…これから真剣に口説く」

今まで口説いてたとか初耳です。とか口に出そうと思っているのに言葉は出ず、ただ顔に集まる熱に困惑するだけだった。






萌え=好き(本人仮定)






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僕としては萌えは好きとムラッとするって意味←
なんか、榊くんも一緒だと思う。
ムラッてしてるんだよ、アレックスに
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