おがふる



「男鹿、お前って馬鹿だな」

あまりにも唐突だった言葉に男鹿はポカンと口を開けて古市を凝視した。
相変わらず携帯を手放しはしないが古市はそんな男鹿に確認をするように再度、馬鹿だ、と声に出した。

「何だ急に…」

あまりに突然過ぎたのか男鹿はいつもなら否定するはずの言葉には触れず、ただ古市の様子を観察した。
これと言って目立った態度も感情も無い。別段頭を打ったとかベタな理由でも無い様だ。ただ変だった。何がと問われれば困るが、あえて言うならば雰囲気が。
男鹿は珍しく頭を使って思い出してみるが古市が傷付く言動や暴力を振るった覚えは無い。むしろそんな些細なる会話も二人の間には無かったのだ。

「男鹿は馬鹿」
「お前そろそろ殴るぞ…」

ウンウンとしきりに頷き、また声に出す古市に流石に男鹿は顔をしかめた。だが古市は反応する気は無いらしく聞こえないフリを徹底していた。本当は聞こえないのかと男鹿が疑う程に。

「男鹿死ねば良いのにな」
「…古市?」
「一緒に死ぬか?」

地獄まで、と続け、見た事が無い不気味な程綺麗な笑顔で言う古市に男鹿は鳥肌が抑えられ無かった。綺麗さからか、不気味さからか、得体の知れない雰囲気からか。恐らくその内のどれかだろうと男鹿は変な確信をし、腕をさすった。

「…馬鹿だからって地獄までは行かないだろ」
「アバレオーガの癖に」
「関係無いだろ、ってかお前が呼んだ名前だろ」

ふっ、といきなり消えた古市の妙な雰囲気に男鹿は安堵の息を飲み込んだ。だがその変化でさえも居心地が悪くなるには十分だ。
古市はまた手に持った携帯に視線を落とし、指がボタンを行き来する。決定ボタンを押した画面は男鹿が想像していたメール送信画面では無く携帯に元から付いているメモ帳だった。

「メモ帳…?」
「プライバシーの侵害…だがまあ、ヒントをやるよ馬鹿」
「誰が馬鹿だアホ市」

いつもの調子で古市の頭を軽く叩いた男鹿は似合わないため息を一つついた。そんな男鹿を一瞥した古市は閉じた自分の携帯を持ち上げ、男鹿の顔の前に突き出す。

「ヒント、死にたがり」
「は…?」
「はい10秒!」

じゅう、きゅう、いち、終わり!
答えさせる気ゼロか。とツッコミたいのを我慢した男鹿は睨む様に古市を見て答えを促す。
するとパカッと目の前に突き出されていた携帯が開き、ずらりと並んだメモ帳一覧が目に入る。タイトルは全部一緒。

「正解は遺書」

楽しそうに笑う古市に男鹿はまた再発する鳥肌の原因にふと気付く。死ぬ前の生きる事を諦めた目を、古市はしていると。






性格には電子遺書






___
…意味わかりませんね
死にたがりな古市くんとかどうでしょう。
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