東カズ
※ちょっと注意



バツンッと肉を裂く感触と音に手が震えた。ぶわっと汗が出て、止めていた息が一気に口から吐き出される。今すぐにでも離したい手は強張って言うことを聞かない。

「…あんまし痛くねぇな…」

俺の手を離させながら開けたばかりのピアスホールに触る東条さんにギクリと身体が震えた。ポタと耳から出る血がカッターシャツの襟に染み込んで赤くなっている。

「これ、いがいと、こわいです…」
「まあ、そうだろうな」

東条さんは苦笑を顔に浮かべ、俺の手からピアッサーを抜き取る。それを紙袋に入れ、また新しいピアッサーを取り出した。バリバリと厚紙を破く音にまた身体が震えた。

「ん、片耳な」
「うー…」
「お前からやるって言い出したんだろ、渋るなよ」
「そー、ですけど…」

ピアスは開けたい、でも一人は無理。だから東条さんにお願いしたのだが、「なら俺のも開けろ」と条件を出された。その時の葛藤と言ったら。

「好きな人の身体に穴開けるって、すっごい怖いです…」
「だから俺もこえーって」
「…わー、ポーカーフェイス?」
「馬鹿にしてるだろ」

してないですと言いながら、内心信じてはいない。表情筋が動いて無いんじゃないか。
それより、耳から出ている血を止めて欲しい。

「いくぞー」
「ぎゃー!ほんとまじ待って!てか絶対怖くないでしょ!」
「だからこえーって」

ほら、と掴まれた手を引っ張られ、抱き着く様な形になる。したたかに逞しい胸板で打った鼻がヒリヒリした。

「なん…」
「心臓」

ぶっきらぼうに言われた言葉の通りにさっきまで氷で冷やしていた耳を当てた。途端にバクバクと音が聞こえてヒュッと息を飲んだ。

「…こえーよ」
「…東条さんも怖いんですか…、へー…」
「なんだへーって」

仕方ない。今までずっと東条さんには怖い物なんて無いって、ずっと思っていたんだから。
バクバクと鳴る心臓に、さっきの自分もこうだったのかなと急に恥ずかしくなってきた。

「…とりあえず開けるぞ」
「わー!待って待って!」
「誰が待つか」

地味に涙でぼやけた視界でニッと意地悪く笑った東条さんの顔に不覚にもドキッとしてしまった。ぴたりと当てられた針に目を閉じたくなるけれど我慢して東条さんと視線を合わせた。恐怖でバクバクと鳴る心臓、息が詰まる。

(あ、なんか)

「恋に落ちる瞬間みたい、な」
バツンッ!

ギクと身体が揺れた。

「あ、ああ、合図してく、くださっ……!!」
「お前が変な事言うからだろっ!」
「いっ、いい言ってません!…た、ぶんっ…!」
「ほら自信無いだろーが!なんだ恋に落ちる瞬間みたいて!」

そんな事口走ったのか俺っ?!
とかの驚愕より意外にも鼓膜に響いた肉を裂く音に身体が震える。体のあちこちに穴を開ける人の気が知れない。

「耳の奥が気持ち悪い…」
「随分な言いようだなお前は。ほら反対」
「無理無理!もう良いです!」
「片耳で良いのか?」
「どっちにしろファーストピアス一つなんですから良いじゃないですかー…!耳が気持ち悪いー!」

そのまましばらく気持ち悪い気持ち悪いと喚いていれば東条さんがひょいと俺を自分の脚の上に乗せ、真正面から見てきた。

「…なんですか……」
「血、止めないとな」
「…東条さんも止めないとですよ、さっきからシャツ汚れてます」
「後で洗う」
「いやだから、後でじゃ落ちなひっ?!」

ベロ、と耳を舐められた。まるで味わう様に血を吸われ、首に垂れた血も舐め取られる。ぞわぞわと得体の知れない気持ち良さにぎゅうっと目を閉じ、東条さんのシャツを握る。ぞわぞわが段々背筋に伝わるぐらいのゾクゾクに変わってきて変な声が出そうになった。

「エロ…」
「っ…、ん…!」

貴方の声の方がエロい!
何だか変な方向に流されていっている。この方向はちょっと明日の体育的にマズイ。とてもマズイ。体育の教師は学年主任だ、サボるのはマズイ。

「と、東条さっ!明日!俺たいく!」
「サボれ」

言うと思った!絶対言うと思った!
服に手を掛け始められ、嗚呼本格的に無理だと悟る。こうなると何が何でもヤル気になるのが東条さんだ。でもタダで流されるのは気に食わないから、目の前で流れている血を俺も舐めてみた。うん、マズイ。

「まず…」
「血だからな」
「よく舐めれましたね」
「そりゃお前のだからな、お前だった物が俺の中にあるって独占されてるみたいで気分が良い」

なんて、恥ずかしげも無く言うものだから顔が熱くなってきた。さっきまでまずかった血が甘く変わる物だからまた舐めてみた。なんだ俺、現金だ。

「あまい、かも」
「そりゃ良かったな、てかカズ、シて良いか」
「スル気満々の癖に…」
「相手の同意が無い場合強姦だって言われたんだよ」

誰に、とは聞かない。多分古市さん辺りだろうから。
了承する様にがぶっと首を噛めば東条さんが耳元でクッと笑って俺の血を舐めた。
やっぱり甘い気がする。






恋に落ちる瞬間みたいに溺れる






___
二人でピアス開ける話
エロ目指して途中で無理ってなった。キャラ崩壊が酷いね!
もしかしたら続きを書くかも

ピアッサーの回し使いは駄目らしいです
ピアス開けたい。キャラにあったピアス付けたい。
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -