邦→男→→→←(友情)古市
※ウズラ様へ
※邦枝視点



がつん、と脳が鉄パイプで打たれたように揺れた。

赤い絵の具が世界にぶちまけられた様に染まる道を一人歩く。
今日はいつもいる二人が用事で、もう二人はケーキバイキングとかに行くと授業から飛び出して行った。だから一人。
久しぶりの一人の帰宅に寂しさを感じながら歩く度に脱げそうなローファーに石を当てた。

「アルバイトでもしようかな…」

する気も無いのに呟いて、そんな自分にため息をつく。メールが無いかを確認する為に最近穿き出したスカートのポケットに手を入れた。

「あれ、ケータイ…」

そこでいつもの手に馴染むケータイが無いことに気づいた。その場に立ち止まって鞄を漁るが無い。しばらく焦る心から逃げる為に今日一日の記憶を漁り、ふと教室でメール確認をして机に置いて来たのを思い出した。

「どうしようかな…」

いつもの面々で帰っていれば皆を待たせる羽目になるから取りには行かないが、今日は一人だ。それにケータイが今自分の手元に無いのは私しか知らない。
別に引き返すのが苦には為らないぐらいの距離だ。後ろを振り返り何百メートルか先に壁を赤く染め、窓に夕日を反射させる校舎が見て走り出した。

「あーあ、ついてないなぁ…」

声に出して言えば、少し気が晴れた。


相変わらず落書きだらけの壁を尻目にまだ開いていた門にホッとしながら通った。
そこら辺に散らばっている鉄パイプやバット、木刀なんかもある。渋い物で兜割りがあった。鎌倉で買ってきたのか。

「近道しちゃお」

誰もいないのを良いことにスカートが捲れるのも構わず窓から入って教室の扉に手を掛けるが一向に開かない。鍵を掛けられたと苦い気持ちになりながら2階の職員室まで上がる。流石にガラスが割れてスカートが切れそうな窓からは入らない。
面倒な気持ちを押し殺しながら一年フロアの奥の職員室に向かう。ふと、そういえばアイツはまだいるのだろうかと胸が期待で高鳴った。ドキドキと激しい鼓動を訴える胸に鞄を押し当て両腕で抱えた。

「古市」
「…っ?!」

突然聞こえた声に鞄を落としそうになった。さっきまで期待していた声だった。心中でガッツポーズしながら聞こえてきた教室の窓から中を覗いた。

「ふーるーいーちー」
「ダーッ、ブー!」
「起きねぇなこいつ…」

いつも一緒にいる友人の頬をむにむにと摘みながら遊んでいる姿に思わず笑いが零れそうになった。赤ん坊もぺちぺちと叩いているがその友人は起きない。いつも通り綺麗な顔に綺麗な髪だ。最初に彼を見た時は、あんな色に染めるなんてと蔑みの眼差しすら向けていたが地毛と解った途端に罪悪感で謝りたくなったものだ。彼も本能的に気づいていたのか私にあまり近付こうとしなかった。

「ふるいちー…」
「アウー…」

アイツが彼の髪を掬い上げて指を通している。
むわ、と心の奥から違和感が出始めた。違和感に似た、嫉妬とも似ない、何だか痒いのに何処が痒いのか解らない感じだ。

「起きろよ…」

ぎし、とアイツが彼が突っ伏して寝ている机に手を置いた。
何かがビービーッと痛い程に警報の様な物を掻き鳴らし始めた。此処にいるな、と。そのくせ足は頑として動こうとしないのだ。

「起きろ古市」

がつん、と脳が鉄パイプで打たれたように揺れた。
アイツが躊躇いも無く彼の頬にキスをしたのだ。それから宝物の様に彼の髪に触れた。

「んぅー…うー、おがぁー…?」
「やっと起きたか馬鹿市」
「うるへー…あー、ねむいー…」
「帰ってから寝ろ、ほら早く」
「へーい、おがあんがとー…」
「…ああ」

アイツの罪悪感の滲んだ、何処か楽しそうな顔に一気に身体が動いた。取りに来た教室の鍵も、教室にあるケータイも忘れて走り出す。階段を全段飛び、窓を抜けて走る。もう赤では無くなり始めた世界に急かされる様にひたすら足を前に出す。

どうしてとアイツに疑問をぶつけながら。

家に帰ってから夕飯も食べずに布団に入った。
翌朝千秋にメールと言われてからケータイの存在を思い出し、お詫びにケーキバイキングに行こうと誘った。暫くしてからいつも通りになって、恋心がまた動き出す。
少し変わったのは思いの言葉を吐き出せ無くなった事。





私が変わっても世界は変わらない






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長くなった!長い!
だが楽しかった!
てか邦→男はやりやすいが
男←(友情)古
って無理だわ(笑)
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