シンアリ
※過去捏造



シンドバットは肩をぐるぐると回しながらバルバットの城の廊下を歩いていた。

「会談はサボれないから嫌いだな…」

廊下のど真ん中でふあ、と間の抜けた声で欠伸をし、ググッと伸びをするシンドバットに軽い衝撃が襲う。

「うわっ!」

軽いとは言え油断していたシンドバットには十分な衝撃で、重力に逆らってそのままぐらりと倒れ込む。どうにか先に床に手を付いてその体制からジャンプをしてサーカスの曲芸の様に立ち上がる。
一息付いて後ろを振り返れば小さな子供が本を床にばらまいて呆気に取られた様に見ていた。

「大丈夫かい?」
「ふへ?…はっ、や、だだ、大丈夫!…です!すいません!」
「はは、そんなに本を持ってどうするんだい?アリババ君」

今にも土下座しそうな子供の雰囲気にシンドバットは苦笑いを零しながら話しの先を変える。
アリババはアリババでシンドバットの言葉にやっと気づいた散らばった本を広い集める。

「えと、書庫に帰しに…ん?な、名前?」
「第三王子、アリババ・サルージャ、だろう?」

やっとシンドバットが自分の名前を呼んだ事に違和感を持ち、何故かと視線で訴えればシンドバットはニカッと笑いながら答えた。

「バルバット国王とちょっとした友人でね、この城にいて他の二人と似てない小さい子供と言えば君かなー、と思ってね」

当ってたかな?とアリババの目線に合わせて屈み、頭を撫でるシンドバットにアリババはこくこくとひたすら頷いた。

(あと女の子みたいだ、とも聞いていたんだけどね)

シンドバットの心中で付け足された言葉が聞こえるはず無くアリババは頭を撫でられるという久しぶりの感覚に嬉しさを感じていた。母が死んでから誰からもされていなかったなとアリババは一瞬過ぎる母の影に懐かしくなった。

「それにしても難しい本ばかりだ」
「勉強の為って…、あと自分の為だから」
「努力か、格好良いな」
「…格好良い……」

誰にも言われた事が無く、して当たり前だと努力してきたアリババには、シンドバットの言葉は今までの努力を肯定された様に思えた。才能で打ち消されない、ただ肯定の言葉。

「お兄さんも格好良いね」
「…そうか?」
「うん」

純粋に思った事を口に出すアリババにシンドバットは照れたような笑いを返す。ガシガシと頭をかき、「ありがとう」と帰せばアリババはニコリと笑った。

「あ、書庫行かないと…」
「おっと、大分引き留めてしまったね」
「ううん、お兄さんと話せて良かった」
「それは光栄だ」

お互いくすくすと笑い合い、アリババはまた本を両手いっぱいに持ち、最小限の動きでシンドバットに手を振り走って行った。シンドバットも手を振り返し、小さな背中が角を曲がるまで見届けて歩き出す。

(また会えるかな)
(また会いに来るとしようかな)

そのまたが来るのが十何年後。
彼等はまた初対面として出会う。






君に会いに






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やってみたかったけど如何せん意味わからん
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