榊アレ
※miku様へ



「黙れ糞オタク!」

がこんと蹴り上げられた青いプラスチック製のごみ箱に榊は成す術も無く頭に被った。
事の発端は数十分前


「…榊くん、コレは何デスか?」

ぴくりと片眉を動かし、たんたんとリズミカルに叩き出される机を指で打つハーモニーに榊はしばらくの沈黙を使い、明らかに不機嫌なアレックスを見詰めた後。

「…嫁」
「聞いてんノはソコじゃねえヨ」
「…大丈夫だ、アレックスの方がかわいい」
「ブッ殺されたいんデスか、榊くん」

ぴきぴきと出ている青筋に榊はどうどうと言わんばかりに両手をアレックスに向け、アレックスがさっきから指を指している物(榊曰く嫁)に目をやった。
巨大とは言わないがそこそこの大きさのポスターに恋愛シュミレーションゲーム「ラブプ●ス」(大人の事情により伏せ字)。榊にしてみれば愛すべき嫁、流石にアレックスを人質に取られてそれを壊せ、破け、と言われれば壊さない事も破かない事も無い、と言う代物だ。しかし問題はそこでは無く、常にこの部屋にあり、榊が毎日持って来てプレイしているゲームに、何故今更アレックスが指摘したのかだ。
榊は言外に解らないと首を傾げ、アレックスを見た。そんな榊にアレックスは更に不機嫌さを増させながらダンッと机に手を叩き付けた。

「僕が言っているノは、ソッチじゃアリマセン、てかアレは諦めマシタ」
「……」
「僕が言いたいノは、増えてマスよねって事デス!」

ビシッと効果音が付くほどに指を指されたのはポスターとゲーム、では無くその空間だった。
アレックスが言う通り、増えている。ポスターとゲームはまだ良いだろう(良くないが)、だがその他にあるのは美少女が表紙のライトノベル数十冊、ボーカ●イドのポップ、何が描いてあるか解らない薄い本何冊。
アレックスが指を指したその空間は榊の私物ゾーン(オタクゾーン)と化していた。何とも生徒の手本に全くならない校則違反の数々。ノーマルな方は思わず目を逸らすだろう。

「なんでアンナ事になっているんデスか!!」
「…アレックスが家に来ないから…」
「典型的なオタクの部屋はもう行きたくアリマセン!」
「だからこの頃しまってる……」
「これは」
「常に置いておきたい物…」

アレックスは思わず口をついて出そうになった「死ねば良イ」と言う言葉を飲み込み、近くにあったごみ箱を蹴り上げた。


「あー、平和やなぁ」
「アレックス先輩も諦めませんね…」

少しばかり離れたソファに腰掛け、お茶を飲む出馬と三木はふぅと一息付き、くすくすと笑い合う。そんな二人に気付かない二人にまた出馬と三木は笑い合う。

「あ、」
「…榊のヤローか……」
「諦めないわね…」

扉の前で何枚かの書類を持った静と郷はいつも通りのアレックスの怒鳴り声に苦笑いを浮かべ、中に入ってとばっちりを受けるのはごめんだと全員の分のジュースを買いに、二人は自販機へ歩き出す。揃いも揃って仕方ないなと言わんばかりの笑顔で。

「これを片付けたら俺の家に…」
「下心見え見えなんだヨ!!」

平和だなぁと思わず言ってしまう様な、抜ける様な青い空が窓の向こうに広がっていた。






平和測定値






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miku様リクエストありがとうございました。
なんだかよく解らない物になりました
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